他者を知ること

7月短期クラスにビルマから来た生徒さんがいました。年齢がバレてしまいそうですが、私の中でのビルマは映画「ビルマの竪琴」で主人公の水島上等兵がオレンジの袈裟を着て、竪琴を奏でるシーンしか思い浮かびません。どんな国だっけ?と調べてみると、現在はミャンマーと呼ばれている国でした。旧ビルマというのが正確なところです。本人に改めて聞いてみると、「お年寄りはビルマと言うけど、若い人たちはミャンマーと言っています」とのこと。興味を持って調べ進めてみると、ミャンマー(旧ビルマ)はタイの左隣に位置し、中国やバングラデシュ、ブータン、マレーシアなどと国境を接しています。古い寺院等の建築物と山々の調和が美しい国でした。

しかし、ミャンマーでは昨年の2月に軍部がクーデターを起こしました。アウンサンスーチー氏を拘束し、市民による抗議デモを武力で弾圧しているそうです。国民軍が武力で対抗して、血みどろの争いが繰り広げられているのが現状とのこと。ウクライナとロシアとの間の戦争のように、日本の報道はどうしても一面的になりがちですから、善悪を決めつけると本質を見誤ると思いますが、いずれにしても国民たちは巻き込まれてしまっているのです。本人の口からは「大変な状況になっている」としか聞いていませんが、若者たちを筆頭に、ミャンマーのそうした状況に愛想を尽かし、国外に移住する国民も増えてきているようです。

 

今回はたまたまビルマの生徒さんがいて、ビルマの国のことを少し知れたように、他者を通じてこそ世界を知ることができるのです。他者を知ろうとすることで、その背景にある世界を知れるという感じでしょうか。それは大げさなことでなくても良いのです。他者が好きなことや大切にしていることを教えてもらうだけで、私たちの世界も広がります。対人援助職である私たちは、他者を理解しようとして傾聴をすることになりますが、それは自分の世界を広げていることにもつながるのです。自分だけでは広がらなかった世界を、他者を知ることで広げてもらうということです。

 

 

そう考えると、人との出会いがいかに大切か分かりますね。私自身も、節目節目で出会った人たちに、良くも悪くも大きな影響を受けて、ここまで生きてきたのだと思います。福祉教育の世界に入ったもの、小学校時代の知り合いが大手の介護スクールで働いていて、当時ひきこもりをやっていた私にアルバイトしてみないと声をかけてくれたことがきっかけでした。最初から介護の世界に興味があったわけではなく、むしろ全く知らなかった世界です。それがたまたま知り合いをつうじて、この世界に触れたことで、今こうして介護の学校に20年近くたずさわることになりました。自分の興味だけを追い求めていたら、決して辿り着かない世界でした。人の出会いとは不思議なものですし、その出会いを生かすのはやはり他者を知ろうとする興味や好奇心だと思うのです。