小さな声にも耳を澄ます

介護職員初任者研修でも実務者研修でも、アンケートやリアクションペーパーという形で、生徒さんたちから声をいただいています。もう10年以上にわたって、全ての生徒さんたちから様々な感想や意見等をもらっていますので、慣れてきたというか、おおよその感じは想像できます。「先生方がとても優しくて熱くて、楽しい研修でした」、「素晴らしい仲間たちと出会えてよかったです」、「介護に対する考え方が180度変わりました」などなど。ほとんどは嬉しい声ばかりです。それでも、たまに違う角度からの感想や鋭い意見もあって驚かされたり、また改善点や批判的な声をいただいた場合は真摯に受け止め、この先に生かしていこうと考えるようにしています。

 

10月短期クラスのアンケートを見ていて、驚いたというか、疑問に思った声がありました。生とさんからの感想の中に、こう書いてあったのです。

 

いつ誰からかかってきた電話でも、できるだけ丁寧、親切かつフレンドリーに対応しているつもりでしたので、不安に思わせてしまったのが不思議でした。自分では丁寧に対応しているつもりでも、10年以上電話を受けてきて、どこかで慣れが出てきてしまい、雑な対応をしてしまったのかなと反省しました。心当たりは全くないのですが、相手がそう感じたのであれば、良くない対応だったのだと思います。声のトーンや話し方、電話は相手が見えないだけに余計に難しく、もう一度、自分の電話対応を見直さなければならないと考えました。

 

ちょうど研修が終わった当日に打ち上げに誘われましたので、飲みの場ではありますが、思い切ってその生徒さんに聞いてみることにしました。本人から直接、どのへんが不安にさせる対応だったのか教えてもらうのが手っ取り早いですし、もしかすると誤解があれば解けると思ったからです。クレームを上げてきた本人に直接そのことを尋ねるのは少々気が引けましたが、せっかくのチャンスだと思い、彼女の隣に座って、「さっき書いてくれたアンケートに電話対応で不安になったと書いてくれていましたけど、何か変なこと言ってしまいましたかね?」とドキドキしながら切り出してみました。

 

彼女は一瞬戸惑ったような顔を見せ、「えっ、そんなこと書いていました?あの電話に出てくださったの、村山さんですよね?私は電話で話したことで不安がなくなって、安心して学校に来れたという意味で書いたのです。問い合わせの電話をするのも勇気が必要で、かけようとして電話を置いてを何度繰り返したことか(笑)。勇気を振り絞って電話したところ、とても丁寧にフレンドリーに教えてくださって、『何か心配なことありますか?』とも聞いてくださって、事務的な対応かと思っていたのでびっくりしたのです」と答えてくれました。

 

私もあまりの展開に驚いてしまい、「えっ、そういうことなのですか?電話対応で不安になったようなニュアンスで書かれていたので、どうしたのかなと思って聞いてみたのです」と返すことしかできませんでした。

 

あとで教室に戻って、もう一度アンケートを読んでみると、たしかに彼女のおっしゃったような意味にも取れます(むしろ私が勝手に勘違いしていたようです)。日本語って難しいですね(笑)。全く逆の意味に伝わってしまうこともあるようです。まあ、今回の件は問題なかったということでひと安心でしたが、慣れてきて事務的な対応にならないように、これからも心掛けなければいけないと気を引き締めさせてもらう良い機会になりました。電話は生徒さんとのファーストコンタクトになりますので、そこの対応の良し悪しがケアカレに来てくれるかどうかを決めると言っても過言ではありませんからね。

 

私と彼女が噛み合わない会話をしていたところ、その隣にいた生徒さんも話に入ってきて、「私も初任者研修のパンフレットを請求したのですが、営業の電話がたくさんかかってきて本当に嫌でした。ここ(湘南ケアカレッジ)だけは電話がかかってこなかったので、ここに決めました」と面白いことを言ってくれました。彼女も「そうそう、すごい電話かかってきて困りました」と相槌を打っています。なるほど、ケアカレ以外のほとんどの学校は資料請求者に対して電話営業をしていること、それをほとんどの資料請求者は嫌がっているということが分かりました。それでも断り切れずに、見学や説明会に連れ込まれ、申し込んでしまったりする人の方が多いから、どこの学校も電話営業をするのでしょうね。営業電話がかかってこなかったからケアカレに決めたという生徒さんは珍しいタイプだと思います。

 

ケアカレは生まれてこのかた電話営業は一度もしたことはありませんし、これからもするつもりはありません。人の時間を奪って嫌な思いをさせてまで、10人か20人に一人の当たりを連れ込むような真似はしたくないのです。自分たちさえ良ければそれで良いわけではありません。皆が正しくないことをしているからうちもやって良い(やらなければ負けてしまう)ではなく、うちは正しくないことはしないと目先の損を取ってでも行動できる人の方が最終的には上手く行くと私は考えています。

 

話がずいぶんと脱線しましたが、生徒さんたちの声を聞いてみることは大切です。どんな声であってもスルーしてしまうのではなく、なぜ生徒さんはこのようなことを書いたのか、生徒さんの立場に立って想像してみるべきです。生徒さんの声を真に受けすぎて感情的に傷ついてしまう必要はありませんが、冷静に受け止めて分析してみると、自分では気づかなかった改善点が見えてくるはずです。

 

 

私も先生方も、もうこの年になると、他者が良くないところを指摘してくれることは少なくなってきていますし、ケアカレも10年以上続いてきてベテランの域に達していますから、この先、言ってもらえることはますます貴重になってくるはずです。悪いことや批判などは、生徒さんたちも勇気を振り絞って書いてくれていると思います。その勇気に応えるためにも、私たちは小さな声にも耳を澄ますべきですね。