社会福祉法人とは?

来年度の介護報酬改定について、財務省が少なくとも6%の引き下げを提案しました。経営における収支差の平均が中小企業は2.2%であるのに対し、介護事業者のそれは8%あることが大きな理由です。特に社会福祉法人の内部留保が1.8兆円、各法人平均だと3億円にのぼることが問題視されています。毎年1兆円以上の社会保障費が上積みされて必要となっていく未来を見据え、できる限りの支出を抑えようという意向は当然のこととですが、介護報酬の引き下げという形が正しいかどうかは疑問です。それではどうするべきなのか、社会福祉法人とは何かを含め、少し考えてみたいと思います。


まず介護報酬を6%も引き下げることに疑問を呈するのは、それぞれの介護事業者によって状況が全く異なるからです。収支差が8%あると言っても、サービスの形態によって違いますし、内部留保が平均3億円あると言っても、それは社会福祉法人ごとに違う話ですし(それ以上の内部留保がある社福もあるという意味でもありますが)、その内部留保に関しても、施設の維持や管理に充てるための繰り越しや3か月分の運営費、土地や建物も含まれているという意見もあります。つまり、それぞれに台所事情が異なるにもかかわらず、それを全体として、十把ひとからげに取り扱ってしまうことが少々乱暴です。

 

それでは、どうするべきかというと、まずは社会福祉法人からも税金をいただくところから始めれば良いのではないでしょうか。実は今回何が問題なのかというと、社会福祉法人はほとんど税金を払っていないということです。そもそも、企業として考えれば、収支差が大きいということは良いことです。売上をしっかりと上げながら、経費(コスト)を少なくしている。同じ枠組みの中で、ルールを守りながら収益を上げていくこと自体は何ら悪いことではなく、内部留保が多いことさえ、むしろ介護事業者の存続という点においては正しいことです。税金を払うのであれば、職員の給与に回そうと考える施設も増えると思います。

 

社会福祉法人とは、戦後の引揚者や孤児たちの対応に行政が苦労していたところを、民間の有志やボランティアが私財を投じて始まりました。言ってみれば、誰も手をつけたがらない、不採算の(儲かりようのない)事業であったからこそ、行政は各種の助成金を与えることでサポートし、もちろん法人税や固定資産税を非課税としたのです。そういった篤志家たちの功績は称えられるべきでしょう。ところが、今の社会福祉法人は、民間企業やNPO団体が行っている事業とほとんど内容は同じであるにもかかわらず、なぜか未だに税金を払わなくても良しとされているのです。

 

収益が上がっている社会福祉法人も、他の企業や介護事業者と同じように税金を払うべきです。そして財務諸表を公開するべきだと思います。政府が社会福祉法人に対して2012年度に提案した際、実際に公開したのは全体の52%、うがった見方をすれば、他の48%は不透明、もっと言うと公開できないということです。もし法人税等を払うことになれば、収益が出ているところはその分だけ税金を納めることになり、そうでないところは納める必要はありません。実にフェアです。税金を払った上で内部留保に回すのであれば、誰からも文句は出ないでしょう。まあそもそも、それでは社会福祉法人という枠組み自体何なんだということになりますが…。これは他の●●法人においても同じことが言えますね。もはや社会から優遇され、保護されてまで存続すべき時代の要請はないのです。