「ユマニチュード入門」

認知症の方のためのケアの手法とされていますが、高齢者や障害者のケアの現場、さらには私たちが日常生活で生きていく上でも役立つコミュニケーション手法が書かれています。「魔法ではなく技術です」と本の帯に書かれているように、これまでに誰も考え付かなかった特別な何かがあるわけではなく、むしろ当たり前と思われてしまうような言動の積み重ねにすぎません。それでもなぜそれが「技術」になってしまうかというと、分かっていながらも実践している人は多くなく、また実践していても意識して行っている人が少ないからです。もちろん、知らないから実践できていないという方もたくさんいるでしょう。


ユマニチュードは絆を理念としています。介護を受ける人と介護をする人の間にある絆です。介護を受けるのは病気や障害があるからですが、その中心にあるのは病気や障害ではなく、介護を受ける人でもない。中心にあるべきなのは、介護を受ける人と介護をする人の間にある絆だと考えるのです。ユマニチュードは、人と人の関係性に着目した介護の技法なのです。それを知ると、パーソンセンタードケア(その人を中心とした介護)との違い、そしてユマニチュードの考え方が画期的であることが分かります。

 

まず介護を行うときにはレベルを設定します。

 

    健康の回復を目指す

    現在ある機能を保つ

    ①も②も叶わないとき、できるかぎり穏やかで幸福な状態で最期を迎えられるように、死の瞬間までその人に寄り添う

 

介護をする人にとって最も大切なことは、「相手のレベルに応じた介護を行っているか」を自らに問うことであり、誤ったレベルの介護は相手にとっては害であるとまで言い切ります。これは湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修で皆さまにもお伝えしている自立支援の考え方や相手をよく見るということと同じですね。その上で、強制ケアをゼロにすることを目指し、睡眠をさまたげない、抑制はしない、わきを持ち上げないとします。

 

具体的な技法としては、4つの柱を提唱しています。「見る」、「話す」、「触れる」、「立つ」の4つ。シンプルでいて、奥が深いと思います。たとえば、「見る」はただ見るのではなく、相手の視線をつかみに行く。「話す」は、話題がないときでも、オートフィードバックという自分たちが今実施しているケアをポジティブに実況することで会話が続く方法がある。「触れる」は、飛行機の離陸・着陸のように触れましょう。「立つ」は40秒立つことができるなら、寝たきりは防げます、と実践的です。

 

さらに秀逸だと思ったのが、第3章における「こころをつかむ5つのステップ」です。出会いの準備→ケアの準備→知覚の連結→感情の固定→再会の約束という5つのステップを踏むことで、介護をする人の存在に気づいてもらい、この人となら良い時間を過ごせると感じてもらうことができます。先ほどの4つの柱もそうですが、この5つのステップになると、もはやそれは認知症の人への接し方や介護の世界だけの話ではなく、どの仕事をするにあたっても、日常生活や社会で生きていく上でのコミュニケーション手法としても通用しますし、極めて有効だと思います。これ以上書くと長くなりそうなので、コミュニケーション手法の話はまた次の機会に。