当たり前ではない

これまで、卒業生さんたちからたくさんの色紙やメッセージボードをいただいてきました。3月短期クラスのある生徒さんからは、「これって、学校として書かせているのですか?」と聞かれるぐらい(笑)。「いえいえ、これらは皆さんの気持ちで書いてくださっているのだと思います」と答えたところ、「それじゃあ」ということで、自ら先頭に立って陣頭指揮をとってくださいました。そんなこと学校に言われてやりたくないですし、クラスメイトたちが「やろうよ!」という雰囲気になっているからこそできるのだと思います。でも、その気持ちを受け取る私たちは、それを当たり前だと思ってはいけませんし、むしろ当たり前ではないのです。


私はかつて大手の介護スクールで仕事をしていました。神奈川で多いときには20教室、広島支社に移ってからは、岡山や鳥取、島根、高知、徳島、愛媛など、それこそ両手では数えきれないほどの教室を立ち上げたり、運営してきました。どの教室にも素晴らしい先生はいて、それなりに授業は行われてきたはずです。それでも、私の知る限りにおいて、生徒さんたちから色紙やメッセージボードを学校にいただいたという話は聞いたことがありません。生徒さんが先生に対して手紙を書いてくれたということはありましたが、クラスメイトが寄せ書きを学校にプレゼントしてくれたなんてことは一度もありませんでした。

 

これは湘南ケアカレッジの文化のひとつなのだと思います。この文化が始まったのは、ケアカレが開校して最初の4月短期クラスの生徒さんたちが、色紙を書いてくださり、先生方全員にプレゼントまでしてくださいました。私たちにとっても何もかもが初めてで、至らない点は多々あったと思うのですが、それを上回る、伝えたいという気持ちが生徒さんたちに届いたのかもしれません。その私たちの気持ちに生徒さんたちが応えてくださったのだと思います。そうして始まった文化が、3年目を迎えた今でも続いています。第一期生には感謝の言葉しかありません。

 

このケアカレの文化において、大切なことはお互いに感謝の気持ちを伝え合うということです。お互いを人間として認め合い、与え合うということでもあります。私たちの身の周りを見渡しても、お互いに利用し合うことばかりでうんざりすることがあります。どこのお店に行っても、職場でも、学校でも、日常生活でも、いつの間にか相手は利用する存在であって、相手も自分を利用しようと考えている。どこかでこの流れを絶たなければならない、と私は感じています。そのためにはまず自ら与えることから始め、最後にはお互いに感謝の気持ちを伝える、認める、与え合うようになれたら嬉しいですね。そこには私たちが忘れかけていた本当の人間性が現れてくるはずです。