良い経験

ある施設から依頼を受けて、介護福祉士の筆記試験対策の出張講座を行っています。2013年4月に開校した湘南ケアカレッジの卒業生が、そのまま介護の仕事に就いて、経験を積んでいるとすると、来年度の国家試験を受ける人が出てくるはずで、それに合わせて来年は湘南ケアカレッジでも筆記試験対策講座を行うつもりでした。今年たまたまお声が掛かり、私たちにできることであればと、その施設に先生と私で出向く形で講座をスタートさせました。もちろん、ケアカレにとっても、来年度に向けての良い経験になるだろうと考えていたのですが、まさにその通り、とても良い経験をさせていただいています。


まず何よりも、出張講座ということで、いつもと場所が完全に違います。電車に乗って、地理勘のない駅で降り、施設までタクシーかバスに乗って、ようやくたどり着き、受付で担当の方を呼んでもらい、研修ルームまで案内してもらう。私は何度か繰り返しましたので、少しずつ慣れてきましたが、先生方は毎回初めての経験となります。授業が始まるまで様々な準備をし、いざ始まると生徒さんたちとは初顔合わせ。場所が違えば雰囲気も違うもので、生徒さんたちの反応も異なります。

 

私たちも生徒さんたちのことをよく知らず(現場で働いているということぐらい)、生徒さんたちも私たちのことを全く知らず(湘南ケアカレッジという学校から来ているということぐらい)、手探り状態で授業は進んでいきます。しかも、試験対策講座という内容の関係上、互いのことを知る時間がなかなか取れません。ほんとうは距離を縮めてから授業をする方が学習効果は高いことが分かっているのですが、時間の制約もあり、なかなか難しいのです。

 

湘南ケアカレッジがホームであれば、出張講座はアウェーなのです。とても素晴らしい担当者が間に入ってくれて、生徒さんたちも素敵な方々なのですが、今までとは異なる環境や人たちに囲まれた私たちにとっては、何もかもが初めての経験となります。そんな中、ホームでは普通にできることであっても、アウェーに行くと意外にできなかったりすることもあります。たとえば、いつもは笑いが取れるところで、スベってしまったり(笑)。普通を装っているようであっても、自分自身が普通でなくなっているからかもしれません。

 

それでも、いつも通りに授業しているように見せる先生方には感心させられます。アウェーだからこそ、本人の持っている力がそのまま現れるのかもしれません。ホームであれば周りの環境や人々に助けられていたところを、ひとりで戦わなければならない状況になってこそ、本当の自分が試される。これまで授業をしてくれた先生方は皆、授業が終わったあと、今までにないほど疲労困ぱいし、立っているのがやっとになるぐらい燃え尽きています。それでも最後には、「良い経験になりました」とも言ってくれるのです。そしてそれは、湘南ケアカレッジにとっても良い経験になると私は確信しています。