3年ぶりの国際福祉機器展へ

3年ぶりに国際福祉機器展に行ってきました。とはいえ、今回は「中国介護ビジネス市場説明会」を聴きにいくことが目的です。福祉機器の展示場には目もくれずに会議棟へと向かうと、すでに会場は中国市場に関心のある福祉・介護業界の関係者で一杯です。中国人の方々もたくさんいらっしゃっていました。中国という巨大人口のマーケットや、来年から中国でも介護保険制度(利用者負担1割)が施行されることもあり、何とも言えない熱気に満ちた空間でした。実際に現地で介護事業を展開している中国の人から、現場の様子を生で聴くことができて良かったです。

現在、中国には2.2億人の高齢者(60歳以上)がいます。そのうち4400万人が要介護状態にあり、1600万人は重度の要介護者だそうです。一人っ子政策の影響もあり、一般的な家庭構成としては、4+2+1、つまり、それぞれの祖父祖母がいて、夫婦がいて、その子どもがいるということです。核家族化が進んで、「4」と「2+1」が分断されつつある日本とは少し家族構成が違いますね。このままでいくと、現在の30代の世代の人たちが、1人で2人の高齢者を支えるという社会がやって来るということです。日本よりも10年ほど遅れて高齢化の波が来ているのですが、その分、介護業界のIT化やロボットの導入などに対する意識は高く、また利用者のニーズの細分化、多元化に合わせて、福祉機器は品質重視の傾向にあるそうです。

 

とはいえ、介護保険制度が確立されている日本と違い、介護サービスを提供するにあたって、数多くの問題点も抱えています。

 

・高齢者の支払い能力と意欲が足りない

・介護職員の専門知識が足りない

・施設運営の効率が悪く、コストが高い

・古い介護サービスの営利図式によって、サービス過剰または不足

 

以上の問題点の中では、介護職員の専門知識が足りないことに関しては、湘南ケアカレッジとして協力できることがあるかもしれません。最大の問題は高齢者の支払い能力が足りないことですが、そこは介護保険制度が実施されることで今後変わってくるかもしれません。

 

施設運営の効率の悪さやコスト高に関しては、改善していくことは可能でしょう。もちろん、(お手伝いさんや家事代行の延長線上の)古い介護サービスが根強く残っている部分は、介護職員が専門職として認知されることで変えていかなければなりません。日本の介護業界も通ってきた道ですから、解決可能な問題ばかりだと思います。

 

最後に、講演者がポロっとこぼした、「中国には、休日になると子どもが親の元を訪ねて、一緒に食事をする伝統がある」という言葉が印象に残りました。だから、中国の新しい介護施設には、食事をつくれるキッチンがあり、子どもたちと一緒にご飯を食べられる居間もあるそうです。そういう文化や伝統を知ってこその介護だと思います。

 

そういえば、今回の説明会中にも携帯電話の写真のシャッター音があちらこちらで鳴り響いていたように、中国人はどんなことでも写真として記録を残す意識が強く、またこうした公的な場でも写真を平気で撮るのは、日本人のように極端に自意識が強かったり、他者を気にしすぎたりすることがないからではないでしょうか。他者と自己の間に日本人ほどの壁がないのです。どちらが正しいということではなく、介護の現場にもこうした意識の違いは明確に現れてくると思います。私たち日本人が中国に介護関連の何かを提供できるとしても、まずは他者を知るということから始めなければいけませんね。