この仕事に向いているのかどうか?

介護職員初任者研修を受講される生徒さんたちのほとんどは、「介護の仕事は自分に向いているのだろうか?」と思いながら授業を受けているはずです。なにせ初めての世界に飛び込んだわけですし、まだ知らないことだらけで、実際に利用者さんたちと関わったこともないのですから、その心配や不安は当然ですね。もしかすると、実務者研修を受けに来てくださっている生徒さんたちも、「自分には介護の仕事が本当に合っているのだろうか?」と疑問に思っているかもしれません。介護の仕事を何年か続けてみたものの、自分に向いているのかどうか分からないという介護職の方々は実は多いはずです。

その仕事に向いている・向いていないは、とても曖昧なものです。自分では向いていないと思っていても他者から見ると向いていると思えたり、ある環境においては向いていなくても環境が変わると向くようになったり、最初は向いていなかったのに時間をかけて続けることで向いてくるようになったりと、絶対的な向いている・向いていないは存在しないのです。

 

それでもあえて指標を挙げるとすれば、介護職員初任者研修を15日間受けて修了することができれば、介護の世界には向いていると私は思います。介護職員初任者研修を最後まで受けることができず、途中で来なくなってしまう生徒さんが年間でひとりかふたりはいますので、たしかに介護の世界が全く合わない人はいます。そういう人は、別の世界で活躍すればいいのです。介護職員初任者研修を無事に楽しく修了できたなら、あなたは介護の世界には合っているので大丈夫です。

 

もうひとつの指標としては、これはどの仕事にも当てはまりますが、ある程度、長く続けることができるということは、その仕事が合っていると考えた方がいいです。そういう意味では、介護の仕事を続けて、実務者研修まで修了できたなら、あなたは介護の仕事を十分にやっていけるはずです。介護福祉士を受験するための介護経験が最低3年以上に設定されているのは良いと思いますし、逆に言うと長く続けていれば、自分がその仕事に合ってくるということでもあります。

 

私は介護の学校を始める前に、塾で子どもたちを教える仕事に5年以上たずさわっていました。実を言うと、私は教育の仕事自体は好きなのですが、子どもたちに教える仕事は合っていないのではとずっと思い悩んできました。教室長をやりながらも、自分はこの世界に向いているのか分からなかったなんて、周りの人たちは誰も思わなかったでしょうね(笑)。今から思えば、5年以上も続けていたのだから合っていたのだと思いますし、環境が変わればもっと活躍の場もあったはずですが、どうにも行き詰まりを感じていたのを覚えています。

 

あの時代に必要だったのは、「あなたはこの仕事が向いているよ」、「あなたはこの仕事に合っていると思う」という他者からの言葉や評価だったのではと思います。それは上司からでも、同僚からでも、後輩からでも良かったのです。私は自分のできないところや不得意な分野にばかり目を向けて、自分は向いていないと考えていましたが、誰かが私のできること、得意なことを見てくれて、そこにスポットを当てて褒め・認めてくれていたら、私の認識も少し変わったのではないかと思うのです。

 

 

他者からの言葉や評価は、想像以上に価値があるのです。その仕事に向いているかどうかなんて、誰にも判断できませんし、考え方次第で変わってしまうものなのですから、だとしたら「あなたは介護の仕事に向いている」と伝えてあげる方が生徒さんたちを幸せにするのではないかと思います。何が言いたいかというと、介護の学校や先生方の仕事の意義のひとつに、「あなたは介護の仕事に向いている」と伝え、自信を持ってもらうことがあるということです。ケアカレの卒業生さんたちには、自分は介護の仕事に向いていると思って働いてもらいたいですし、その自信は利用者さんたちを幸せにしますし、いざという時に自分を助けてくれるはずです。