介護職員初任者研修について

今年4月から新しい介護・福祉教育の学校をオープンする立場としては、「介護職員初任者研修」について書かないわけにはいきません。

 

なぜこれまでの「ホームヘルパー養成研修2級課程」に「介護職員初任者研修」が取って代わるのか。裏の裏の事情まではさすがに分かりませんが、2000年に介護保険制度が誕生して以来、この研修であり資格と付き合ってきた経験を踏まえて説明させてください。

 

まず表向きは、2011年3月に行なわれた「今後の介護人材養成のあり方に関する検討会」において提言されたように、「今後の介護人材のキャリアパスを簡素でわかりやすいものにするとともに、介護の世界で生涯働き続けることができるという展望を持てるようにする必要がある」ということです。

 

これまでの介護・福祉の世界の研修体系は、やや複雑化されつつありました。“やや”と書いたのは、受け取り方によっては、複雑と考える人もいたし、多様性があると考える人もいたということです。決して、介護福祉士に至るまでのキャリアパスに十分な仕組みがなかったわけでも、ましてや介護の世界で働きつづける展望が持てなかったわけでもありません。分かりやすく言うならば、ちょっとゴチャゴチャしてきたので、ここで一旦整理しようということです。

 

そして、整理をするついでに、いや、本当のところは、研修の内容を見直そうということです。この先の少子高齢社会を見据えた上で、必要な介護職員の量(人数)が増えることはもう絶対条件なのですが、それだけではなく、介護に携わる人々の質(レベル)を上げていかなければなりません。前者の量(人数)を増やす必要性は誰の目にも明らかですが、後者の質(レベル)を上げる必要性は実際の現場でしか知りえません。

 

考えてみれば当たり前の話なのですが、たとえ人数が増えても、そこに質が伴っていなければ、余計に大変なことになってしまいます(仕事が増えるということです)。こういった現場の危機感を少しでも和らげるため、介護の世界の入り口である「介護職員初任者研修」にて、これまで以上にしっかりとした教育が求められるようになったということです。

 

「訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修2級課程」はもう10年以上前につくられたカリキュラムです。これだけ介護の世界に広がりが出てきた今、必要とされる知識や技術とそうでない知識や技術が昔とは違ってきているのは当然のことでしょう。古いものは新しいものに、一刻も早く更新していかねばならない。より充実したカリキュラムが求められているということでもあります。

 

たとえば、認知症に関する授業時間が大幅に増えました。300万人時代と騒がれているとおり、私たちの周りには認知症の人が増え、接する機会もまた増えていきます。私たちが認知症の方にどう接するかで、その症状は改善したり悪化したりしますので、知っているか知らないか、学んでいるかそうでないかの違いは大きいはずです。認知症を取り巻く環境から、医学的側面から見た認知症や接し方、そして家族に対する支援まで、私たちは学ぶ必要があるのです。

 

古きから新しきへ。より充実したカリキュラムへ。「介護職員初任者研修」において、研修の質と内容は、実際の現場に即して見直されたのです。もちろん、見直されたのはあくまでも体系であり、カリキュラムですので、その実際の内容は各学校によって大きく異なってくるはずです。これまでのホームヘルパー2級講座をそのまま引きずってしまうのであれば、器は変わってもその中身は何ら変わっていないということになってしまいます。そうではなく、介護・福祉教育の一端を担う私たちは、常に明るい未来を提供していかなければならないと考えています。

 

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