「毎日がアルツハイマー」略して「毎アル」という強烈なタイトルの映画があることを知ったのは、ある新聞紙上で、上映会が行なわれることが掲載されていたことによります。ちょうどそのとき、「介護職員初任者研修」の認知症についての授業で用いる視覚教材について悩んでいたので、ぜひとも観に行きたかったのですが、どうしてもタイミングが合いませんでした。それならばとアマゾンで探してみたところ、すでにDVDになっており、迷わず購入して観てみるとにしました。
ユーモアと家族の愛情に溢れる素晴らしいものでした。娘であり監督でもある関口祐加さんが、母ひろこさんを要介護判定してもらうため、ケアマネージャーに相談をもちかけ自宅に来てもらうというシーンがあります。そこでなされたケアマネージャーとの会話の中で、繰り返し同じことを語る母に対し、つっこみを入れつつも、できれば認知症であってほしくないと願う娘の気持ちが切に伝わってきます。結局、要介護3と判定されてしまい肩を落とすのですが、そこから先、どのように母と接していこうかと悩み、行動する姿には暗さはまったくありません。これが認知症と向き合うひとつのコツなのでしょう。
個人的にハッと思わされたのは、映画中に挿入されている大学教授へのインタビューの内容でした。できるだけ詳しく知ってもらうために、以下に部分的に書き起こしをします。
「認知症になるともうその人全部の脳の働きがだめになってしまうと思われがちですが、実はたとえば100%であらわすと、おそらく物忘れとか判断とかほんの1部だけなんです。パーセントでいうと5%も行かないぐらいの脳の働きが、ちょっと悪くなってしまう。残りの95%以上は正常なんです。だから喜んだり、戸惑ったりと、人間としての9割5分以上は残っている。そこを忘れちゃうと正しいアプローチはできないと思います。認知症になったらその人終わりみたいに思われてしまうけどね」
生活等に支障が出てしまうのは、たった5%の脳の働きが上手くいかないだけなのですね。私もつい最近までは、認知症という病気にその方の全てが侵されていってしまうような誤解をしていました。残りの95%は正常であり、実に人間的であることを知ってさえいれば、私たちの認知症の方に対する接し方が大きくブレることはないはずです。その人の生き方や感情に寄り添い、支援していけばよいのです。