介護の世界に目を向ける若者たち

「みのもんたのサタデーずばット」は、介護の世界に入ってくる60歳以上の方が増えているという特集でしたが、取材を受けるにあたって受講生の年代別を調べてみたところ、とても面白いことが分かりました。ここでひとつ質問です。湘南ケアカレッジに入学してくれている生徒さんの中で、最も多い年代ってどれぐらいの年代だと思いますか?20代、30代、40代、それとも50代でしょうか?

 

正解は20代です!

 

下のグラフを見てもらうと分かりますが、湘南ケアカレッジの「介護職員初任者研修」を受講される生徒さんたちの年齢は幅広く、見事なぐらいにバラバラです。10代はさすがにまだ少ないですが、20代、30代、40代、そして50歳以上と、ほとんど偏りがなく、様々な年齢層の方々が受講してくれていることが分かります。これが研修を実に面白いものにすることは以前に述べたとおりで、何にせよ多様性があることは良いことです。その中でも、わずかではありますが、20代が28%ということで最も多い世代ということになります。

たしかに、30代から40代が中心だった10年前に比べると、20代の受講生が増え、それに伴い教室の雰囲気も少しずつ若返っていっている気はします。その中でも、特に増えているのが20代の男性です。男女別に調べてみると、湘南ケアカレッジの「介護職員初任者研修」の男女構成比は男性:女性=4:6ですが、20代に限定すると男性と女性の割合はほぼ5:5になります。おそらく介護の現場も同じような比率でしょうから、もうすでに75歳以上の高齢者を20代の若者が中心になって支える、という図式が出来上がりつつあるということですね。

 

この事実を見て、若い男性にとって仕事が少なくなっているから介護の分野に流れてきているという、ありきたりの分析をする人がいるはずです。一見まともな意見のようですが、おそらく介護の世界を知らない、どこか頭でっかちで、的外れな見解だと思います。そういう一面もあるかもしれませんが、それよりも、介護職を目指す若い男性が増えているのは、若い年代の人たちにとっての仕事に対する考え方、仕事観が変わってきているからではないかと思います。

 

この20年間の日本、そしてこれからの日本は、もはや右肩上がりの経済成長を遂げるべくもなく、少子高齢人口減少社会の流れの中で、少しずつ今あるべき姿に形を変えていっています。そういった成熟社会の中では、これまでのように社会に出てから定年を迎えるまで、平日は朝から晩まで自宅のローンやマイカーの維持費や企業の売り上げのために働き、休日は家族サービスか家で体を休めるといった生活を繰り返していると次第に豊かになる、なんてことはありません。

 

そのことに気づいたとき、若い年代の人々は人の役に立つ仕事がしたい、人と人との関わり合いの中に成長や喜びを見出せるような仕事がしたいと考えるはずです。もっと言うと、今、目の前に助けを必要としている人がいて、その人を手伝う、または手を差し伸べることを仕事にしたいと思うのではないでしょうか。

 

環境を破壊しながら本当は必要のないものを作ったり、安いものを高く売ったり、安売りするために遠い国の子どもたちを苦しめたりするのではなく、まずは身近な人を助けること、傍(はた)を楽(らく)にすることが働くということを悟ったのです。そういう仕事観の変化の中で、介護の世界に目を向ける若者が増え続けているということではないでしょうか。湘南ケアカレッジはそういう若者たちを応援したいと心から思います。

 

もちろんそれだけではなく、若者たちの心の後ろには多少なりとも計算があります。それは需要ギャップということです。若者たちは決して清貧を目指しているのではなく、自分の頭を使って、もしくは肌で感じて、介護の仕事には需要ギャップがあることをきちんと理解しているのです。少し長くなりましたので、需要ギャップについてはまた次の機会に書きたいと思います。