
いつも通り、朝のメールチェックをしていると、「介護福祉士の国家試験の450時間研修(実務者研修)、1年延期へ」というタイトルを目にしました。つまり、実務者研修を修了しなくても介護福祉士の試験を受けられる期間が延長されたということです。さすがに今度ばかりは「まさか」と思いましたが、と同時に、「またか」とも思わせられました。実は、この件に関しては、以前にも2012年度から2015年度に延期された経緯があります。今回はさらに2016年度までとなると、2度あることは3度と言うように、またまた延期されるのではと考えるのは当然です。そして、なし崩し的に、実務者研修の存在自体がうやむやになってゆくことさえも考えられるのです。
延期の理由として、介護分野の人手不足(職員に450時間の研修を受けさせるほど人手が余っていない)が挙げられていますが、もしそうだとすれば、それは果たして1年やそこらで改善・解決する問題なのでしょうか。介護業界の人材不足は今に始まったことではありませんし、これから先10年かけて、ますます需要が供給を上回っていくことは間違いありません。そんなことはだいぶ昔から分かっていたことですから、この時期に再延期した本当の理由はそれだけではないはずです(ここでは書けませんが)。
もちろん現場レベルで言うと、ただでさえ忙しい毎日なのに、さらに450時間の研修を受けるなんて、時間的にも金銭的にも大変です。それを踏まえ、当初は600時間の予定だった研修を450時間に変更したり、通信添削で大部分を修了できるようにしてきた流れがあります。実務者研修を開催している他の学校を見てみても、実際のスクーリング(通学)日数は10日間前後と、初任者研修の15日間と比べても、その短さが分かります。休みを利用しながら15日間の初任者研修に通っている生徒さんも実際にたくさんいらっしゃるので、10日間前後のスクーリング(通学)が通えないとは思えません。
通信添削課題についても、他校の実務者研修に参加した卒業生さんに聞いたところ、「たしかに量はあったけど、それほど大変ではなかった。ちょっと集中してやったら、あっという間に終わってしまい、スクーリング(通学)もとっくに終わっていたけど、6ヶ月経たないと修了証明書は出せないと言われて、ずいぶん待ったよ」とおっしゃっていました(6ヶ月以内には修了できないというしばりがあるようです)。時間だけ聞くと長いように見えますが、実は通信添削を黙々と自宅でやって、10日間前後のスクーリングに参加するだけ。これが実務者研修の実状です。
介護福祉士の養成課程の見直しやそれに伴う実務者研修自体も見切り発車、各関係者たちの足並みが揃っていないうちにスタートしたということだと思います。研修を開催する学校としては、初任者研修は非常に良い内容に(ホームヘルパー2級講座から)生まれ変わりましたが、それと実務者研修がうまく連動していないと感じます。おそらく、実務者研修を開催していた民間の学校も、多くの矛盾に気がついていたはずです。
この延期された1年間で、本当に実務者研修が必要なのか、もし必要であれば、介護の現場で働く人たちの知識や技術、モチベーションを高めていけるような研修にするにはどうしたらよいのか、介護福祉士の質や地位を向上するためにはどういった受験制度が望ましいのか、しっかりと話し合うべきです。結局、振り回されて損をするのは、高い受講料を払って研修を受けた現場で働く人たちという構図は、もうそろそろ終わりにしませんか?受けて良かったと誰もが笑顔になれるような研修をつくっていきましょう!
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