楽しい入浴

「介護職員初任者研修」の入浴の介助の授業では、自分たちにとって楽しい入浴って何ですか?というテーマについて考えてもらいます。そして、自分で思いついたことをグループで話し合ってもらうと、ありとあらゆる楽しい入浴のイメージが登場します。たとえば、「入浴剤」、「浴槽で足が伸ばせる」、「露天風呂、泡風呂、ジェットバス」、「テレビを観ながら、音楽を聴きながら、読書をしながら」、「壁が明るい色」、「床暖房」、「飲み物持参」などなど。マニアックなところでは、「アヒル」、「42℃」なんていう意見もありました。入浴という言葉だけで、これだけ楽しいイメージが想起されるのですね。

 

私も最近、歳を取ったせいもあるのでしょうか、長い時間の入浴が好きになりました。本を読みながら、1時間近く入っていることもあります。小さい頃は1秒でも早く風呂から出たくて仕方なかったのですが、60秒数えないと出てはいけないということで、「1、2、3…」とできるだけ速く数字を数えて飛び出したことを懐かしく思い出します。

 

今までで最も楽しかった入浴の思い出は、真冬に大島に行って露天風呂に入ったこと。吐く息が白い寒さの中、更衣室から走って風呂に飛び込み、首のところまで深く浸かったときの気持ちよさ。そして、その露天風呂から見える富士山の綺麗だったこと。いろいろな意味で、ずっとこのまま温かい露天風呂に入っていたいと思ったものです。

 

入浴にはたくさんの意義があります。ひとつは、身体的意義。皮膚の清潔を保ち、からだが温まることで血行が良くなります。新陳代謝が進むことで、筋肉の緊張や疲労が和らぎ、リラックスすることができます。さらに食欲を増進させ、便通が良くなり、深い眠りにつきやすいという効果もあります。その他、心理的意義や社会的意義もあります。心理的意義とは、ゆったりとした気分で開放感が得られ、気分転換をすることができること。社会的意義とは、身体を清潔に保つことで、身だしなみを整え、他者との人間関係の中で積極的に社会参加できるようになるということです。

 

私たち以上に、高齢の方にとっての入浴の大切さが分かると思います。そして、その大切な入浴は、楽しいものでなくてはならないはずです。楽しく入浴してもらうために、私たち介護職員は安心で安全な入浴環境を整えたり、さまざまな入浴用具や整容用具を活用したり、適切な声掛けをしたりしながら、入浴の介助を通して自立を支援していくことになります。何よりも、私たち自身が入浴を楽しいと感じられていなければ、他の人に楽しく入浴してもらうことはできませんよね。

生徒さんが描いた素敵なイラストです。