オレンジは好きかい?

先日、卒業生さんからハガキが届きました。表面には言葉が添えてあり、裏面には歌の歌詞が記されていました。湘南ケアカレッジのスクールカラーについて前に書きましたが、この「オレンジ村から春へ」という歌を口ずさみながら教室に通ってくれていたそうです。正直に言うと、私はこの「オレンジ村から春へ」という歌自体も、そして歌手のリリーさんについても全く知りませんでした。そこでインターネットで検索してみたところ、昭和51年にリリースされ、資生堂のCMで使われた曲だそうです。私がまだ生まれたばかりの頃ですから、知る由もありませんね。

 

生まれた時代が違えば、当然のことながら、知っている曲も違います。そして、長く生きているとそれだけ知っている曲が多いかというと、意外とそうでもありません。幼少期から青春期までの間に聴いた、つまり若かりし頃に慣れ親しんだ曲(音楽)が、その人の知っている曲(音楽)となるのです。自分を振り返ってみても、最近のオリコンランキングにあるような曲はほとんど知らず、特に自分が10~20代の頃に聴いていた曲はタイトルを見るだけでメロディーが思い浮かぶようになってしまいました…。

 

歳を取ったと言ってしまえばそれまでなのですが、それぐらい若い頃というのは、あらゆる感覚を通じて音楽を聴いているからこそ、いつまでもその記憶が自分の中に定着するのだと思います。

ここで挙げるのも少し恥ずかしいのですが、チェッカーズやプリンセスプリンセスからドリカム、サザンオールスターズ、Mr.Childrenなど、このあたりのアーティストやその曲は、もはや私の一部となっています。今の10代から20代だと、それがAKB48や嵐、いきものがかりと変わってゆくのでしょう。

 

これからのデイサービスは大変だと小野寺先生は言います。それは歌う歌ひとつを取ってみても分かります。今の高齢の方が童謡を歌って楽しむのは、そういった曲に小さな頃から慣れ親しんでいるからです。ところが、育った世代が違ってくれば、また聴いてきた曲も違いますので、気がつくと童謡や演歌ばかりではつまらないという時期がやってきます(もうすでにやってきているのかもしれませんが)。アリスやピンクレディー、オフコース、海援隊、ビートルズなどをこそ歌いたいという世代はすぐそこまで来ていて、そのニーズはますます多様化していきます。

 

だからこそ、介護職員はアンテナを常に張っていないといけないと思うのです。それは世の中に対してということだけではなく、自分とは違う世代に生きた人たちにとって、何が流行であり、何を望んでいるかということを、常に感じていなければならないということです。そうでなければ、これからもずっとデイサービスでは童謡や演歌が歌われつづけることになるでしょうし、高齢の方とはそういうものという固定観念から抜け出せなくなってしまいます。知らないことは仕方がないので、調べたり、聞いたりすればよいのです。そうやって、自分たちがこうしたいと思うことをするのではなく、利用者がそうしたいと思うことをサポートしていくことが大切なのだと思います。