皆さんの努力に感謝

「介護職員初任者研修」の第14日目には、総合生活支援技術演習が行われます。ずいぶんと長い名前の授業ですが、つまりは実技部分の確認の演習ということです。この授業が行われる日は、生徒さんはもちろんのこと、私や先生たちも、最も緊張して気分が高まります。初日の緊張感、講義のまったりした感じ、実技が始まるときの開放感、そして最終日の修了試験の祈るような気持ちと寂しさ、どの回のどの授業もそれぞれの味わいがありますが、第14日目ほどジェットコースターのような気分になることはありません。それほど大変ですが、楽しみな授業なのです。

総合生活支援技術演習では2つか3つの事例を通して、実践的な介護の技術を学びます。たとえば、「これから1週間ぶりに娘宅に外泊する○○さん。外泊するために新しい服に着替えます。着脱介助を行ってください」というお題にもとづき、○○さんの生活を支援するための技術を練習します。ひとつひとつの動作や声掛けには根拠があり、なぜそうしなければならないのかデモを通して伝えつつ、自分でも考えてもらいながら、何度も繰り返し、体に定着させていきます。あたまとからだで覚えていくのです。

 

いつも驚くのですが、この日1日の生徒さんたち全員の集中力たるや、素晴らしいものがあります。年齢や性別のいかんを問わず、誰もが真剣に、ひとり1人の頑張りがクラス全体の雰囲気を高め、それに呼応するようにまたひとり1人が高みに引き上げられていく。先生たちはそれを「スイッチが入る」と表現したりするのですが、そういう正のスパイラルが回り始めます。時を忘れ、寝食を忘れ(これは大げさですが、お昼休みを使って練習する生徒さんもいます)、午後に行われる実技試験での完成を目指して取り組んでくれるのです。

 

さらに驚かされるのは、集中して、真剣に練習に取り組むことで、介護技術が飛躍的に向上することです。こちらが心配してしまうほど、それまでなかなか上手くできていなかった生徒さんでも、この日の練習をきっかけとして腕を上げてくれます。そういった姿を見ていると、正直に言って、私たちには感謝の念しかありません。

 

実技試験は落とすためのものではなく、それまでに取り組んできたことを、決められた空間や時間の中で披露するためのものです。大切なのは、そこまでの過程であって、実技試験で上手くできたかそうでなかったかではありません。だからこそ、実技試験の評価項目には、「演習にきちんと取り組めたか」という加点項目があるのです。

 

「皆さんに感謝します」という小野寺先生の締め言葉は、15日間の「介護職員初任者研修」にたずさわってきた全ての先生方の偽らざる気持ちだと思います。「先生方のおかげで、できるようになりました」と言ってくださる生徒さんたちもいますが、建前ではなく本心として、できるようになったのは皆さんが努力してくれたからです。先生方はその真剣な取り組みと著しい成長を肌で感じるからこそ、生徒さんたち全員に感謝するのです。