「再来年の1月に介護福祉士を受験しようと思っているのですが、実務者研修は受けなくてはいけませんか?」という質問を生徒さんからいただきました。正確に言うと、2016年度(平成28年)まで延期されたということは、2016年(平成28年)の1月に行われる介護福祉士の国家試験までは、実務者研修を受けなくても試験を受けられるということになりました。ですので、質問してくれた生徒さんは、ギリギリで間に合うということになります。このように、今、現場で働いている方からの実務者研修に関する質問が増えてきています。
ところで、延期された理由としては、「資格取得のハードルを上げると、介護への入職意欲を削ぐ」というものでした。この理由を聞いて、「?」が頭に浮かんだ方も多かったはずです。なぜかというと、実務者研修の対象者は実務経験、つまり介護業務経験がある方です。もうすでに介護の仕事をしている方に対して研修を課すことが、これから介護の世界へ入ろうという方の意欲を削ぐということでしょうか?
この理由が明らかに矛盾していることは、さすがにうちの子どもでは分からないかもしれませんが、勘の良い中学生ぐらいであれば気づくはずです。人材不足が本当の理由であれば、それは1年延期したところで解決している問題ではありませんよね。今働いている職員のシフトを維持したいという願望やできるだけ楽をして介護福祉士になりたいという発想を、介護業界における人材不足という問題を大義にすりかえた、単なる言いがかりにすぎません。
そこには介護職員のスキルや知識をなんとしてでも上げようという前向きな精神がないのです。そもそも、現行の実務者研修はスクーリングが8日程度で終わってしまいますし、未経験者でも受けられるという摩訶不思議なことになっていますので、実務者研修が研修として相応しいかどうかさえ疑問です。
さらに元を辿っていくと、介護福祉士の実技試験が免除となる制度を見直すことが先決であると思います。介護技術講習会や実務者研修を受けると、実技試験が免除になること自体がおかしな話なのです。実技試験を免除するのではなく、実技試験があるからこそ、必要な人は介護技術講習会や実務者研修で学びなおすべきなのです。
もちろん、専門学校などの養成施設を卒業していたとしても、実技試験も筆記試験を課すべきです。そういったハードルをそれぞれが巧妙に回避しようとしてきたからこそ、介護福祉士の養成課程が複雑化し、介護の質の低下が叫ばれ、介護福祉士の国家資格としての地位が落ち、ひいては賃金の底上げにつながらず、そして人手不足に陥る、という厳しい現状が生まれたのではないでしょうか。
私たち介護・福祉教育を提供する学校に求められることは、決して安易な道を提供することや資格を売ることではなく、生徒さんたちが現場で活躍してもらえるように、正しい介護の技術や知識、そして考え方を伝えることです。さらに言うと、そういった学びの機会を提供することであり、介護の仕事に対するやりがいやモチベーションを高めることであり、そういった志を共有する仲間たちの輪を広げていくことです。これからも湘南ケアカレッジは、学校として果たすべき王道を進んでいきたいと思います。
追記(2016年3月)
湘南ケアカレッジにおいても、ようやく2016年5月から実務者研修を開催することになりました。上にも書いたように、本物の実務者研修を提供したい思いますので、介護職員初任者研修(もしくはホームヘルパー2級)修了者が受講要件とさせていただきます。
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