「誤解だらけの介護職」週刊東洋経済

本屋にフラっと立ち寄ったところ、すぐに目に入りましたので買って読んでみました。最近は、このような経済誌でも介護というテーマについて取り扱うようになり、それだけ社会全体の介護に対する意識が高まってきていることがうかがえます。しかも、今回の特集は「誤解だらけの介護職、もう3Kとは言わせない」ですから、その内容にも期待しないわけにはいきません。そして実際に読んでみたところ、決して奇をてらったような内容ではなく、実に丹念に取材されていて、中身の濃い記事が多く、非常に感心して読ませてもらいました。

まずは介護職のイメージと実際の現場とのギャップが興味深いです。調査によると、介護職のイメージについて「夜勤などがありきつい仕事」、「社会的に意義のある仕事」、「給与水準が低い仕事」が上位を占めたが、実際に特養で働いている職員は、「介護の仕事をしていると言うと、みんなに『大変ね』と言われるけど、実際にどういう仕事をしているのかよく知らない人がとても多いようだ」とイメージが先行していることに困惑します。

 

「介護は人間が相手なので正解がない世界。自分なりのアプローチで重い認知症の方と心が通じ合えたりもする。イベントの司会もやれば書類作成の仕事もあり、ご家族への接遇も大事。自分の成長も感じられる仕事だと思う」と語る人もいるし、「1日として同じことがないので、毎日新しいことの連続。ルーチーンワークをこなすだけの事務職時代に比べると、プレッシャーはあるが楽しい」と話す人もいます。

 

これらの話を総合すると、どうにも介護の仕事は大きく誤解されているようですね。これらの誤解について、日本介護ネットワーク協会の関口氏は、「介護業界で働いている人たち自身が、必要以上にネガティブな発信ばかりしてきたことも原因のひとつではないか」と指摘します。私もその通りだと思うのです。

 

給与が低いという点についても、介護・福祉は新しい業界(2000年に介護保険制度が始まってまだ14年)だけに、他の産業と比べて勤続年数が低く、勤続年数を入れて比べてみると、実は見劣りしないことを示した切り口のデータ(下参照)は素晴らしいのひと言。勤続年数が長くなればなるほど、男性の場合は販売店員や調理師などよりも給与は高くなり、女性の場合は保育士や百貨店員を上回り看護師に近づいていきます。お付き合いのある施設の施設長も、「これはポジショントークとかではなく、この業界は上を目指す気さえあれば、給与だってドンドン上がっていくよ」と言っていました。

(週刊東洋経済5月17日号より引用)

介護職の離職率の高さ(16~17%)という点においても、全産業の合計(14~16%)と比較すると高く思えるが、サービス業という括りでは、宿泊業・飲食サービス業の27%、生活関連サービス業・娯楽業の21%と比べて明らかに低く抑えられているということです。なるほどと思わせられたのは、離職理由についての調査。1位に挙げられている「職場の人間関係」や4位「収入が少なかったため」はどの職種でも上位にあり、決して介護職だけの問題ではなく、むしろ介護職に特徴的なのは2位「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」という理由です。

 

ここから2つのことが読み取れます。ひとつは、介護職に就く人たちは、やりがいを求めて仕事をしていることが多く、職場に対しても高い理念や運営方針を求めていること。そしてもうひとつは、その働く人たちの期待と理想に、現場が応えられていない、つまり理想と現実の間にギャップがあるということです。この事実をどう解釈するかは人それぞれですが、カギになるのはマネジメントだと特集は結論づけています。

 

最後に、小野寺先生の言葉を借りて、これから介護の仕事をする人たちに、ひとつアドバイスを。「給与や場所や福利厚生も大切だけど、それよりも自分のこういう風にありたいという方向とできるだけ同じ方向を向いている施設や事業所を選んだ方がいい。その方が長続きするし、長く働くことで得るものや見えてくるものは多いです」