「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」に次ぐ、シリーズ第2弾です。「生きる力」について、乙武洋匡さんを含め7人の著者が自身の想いを綴っています。子ども向けと大人向けの両方のバージョンで書かれているため、とても読みやすいですし、様々な視点を知ることができ、うんうんと頷いたり、はっと気づかされたりします。福祉という視点で見ても、これから未来を生きる子どもたちだけではなく、高齢者やそれを支える私たち社会のすべての人が考えてみるべき課題のひとつが「生きる力」だと思います。これからどう生きていくのか、私たちにも問われているのです。
7人の意見の中では、乙武さんと西原理恵子さんの考えに私は共感しました。内田樹さんの「システムが存在しない場に地力でシステムを作り出す力」という考え方はよく分かりますし、その通りなのですが、(特に子どもには)分かりにくいというか伝わりづらい。C・W・ニコルさんの「ちょっとの工夫で正しい生活ができること」はほとんどの日本人の生活から少しずれている感覚があります。椎名誠さんの「自分のことだけじゃなく、地球の命も考えられる力」や三浦雄一郎さんの「生きる力を維持するためにエベレストに登った」は壮大すぎて手が届きません。
乙武さんの「自分の人生を自分で決めていく力」は、最初はピンと来なかったのですが、もう1度読んでみると、深く理解できました。乙武さんは自身が小学校で先生をした経験を踏まえつつ、自分で考え、自分で決定する力が奪われてしまっていると実感したそうです。その点において、自分は手も足もなくてラッキーだったと言うのです。はさみが使えるようになっただけでも、ボールが投げられるようになっただけでも、ひとりで階段を上れるようになっただけでも、両親は毎度大喜びしてくれ、誰とも比較されず、あれしなさい、これしなさいと言われることもなかった。その「手を出さない勇気」が自分を大きく育ててくれたと。そして、世の中のいろいろな常識を疑い、自分で決めていこうと提案します。
それがキミの「生きる力」になる。それができないと、キミはいつまでたっても自分の人生を生きられない。自分の人生でない人生とは、親に従った人生であり、先生に従った人生であり、社会に従った人生だと思う。
もうひとり、西原理恵子さんの「何度転んでもなんちゃない」も素晴らしいと思いました。自身の経験や経歴をもとに、今の日本社会を熟知された上での「生きる力」が考えられていて、傷口に直接そっと手を添えてくれるような文章になっています。男の子に対しては、「おかしいことをおかしい!と思えることが生きる力」だとし、女の子は「結婚しても働け」とアドバイスします。そして、「時間もお金と同じぐらい大切」であり、「お金より、知識や経験が必要になるときがきっとくる」と社会を生きる本質に迫ります。こういうことを大人が実践し、子どもに教えられるようになると、社会はもっと豊かになるはずです。