「100歳の華麗なる冒険」

聞いただけで心躍るタイトルの映画ですが、その通りの映画でした。原作は世界40ヶ国で翻訳され、800万部を超えるベストセラー。実を言うと、映画が始まるまでハリウッド作品だとばかり思っていたのですが、福祉大国スウェーデンの作品であり、いくつになっても人生は冒険であるというメッセージがよく伝わってきました。全編を通して観ると、自分はまだまだひよっ子というか、100歳の主人公アランから見たら、子どもみたいなものだと思えます。人生は実に豊かで、これから先も楽しんでいこうと勇気づけられる映画でした。


物語は100歳の誕生日を迎えるアランが誕生日を迎えるところから始まります。特大のバースデイケーキを準備してくれている最中に、アランは老人ホームの窓から出ていってしまうのです。老人ホームでは大変な騒ぎになっている中、アランは近くの駅まで歩き、バスに乗ります。このとき、ひょんなきっかけで若者から預かったスーツケースを持ってきてしまうのですが、その中には大金が詰め込まれていたのです。アランに逃げられた若者は絶叫し、慌ててアランを探し始めました。

 

バスに乗って駅までたどり着いたところ、その駅は閉鎖されていました。しかし、その駅に住むユーリアスと仲良くなり、ふたりは一緒に大金が入った荷物を追うギャングたちから逃げることになります。その珍道中で出会うほぼ○○学者である煮え切らないベニーや動物愛護が高じて象と暮すグニラを巻き込み、行き当たりばったりの逃亡劇が始まります。この映画の面白いところは、主人公のアランはほとんど何もしないところ。アランのちょっとしたひと言や行動によって、周りは勝手に巻き込まれ、勝手に絶叫し、そして勝手に行き着く先に落ち着くのです。

 

逃亡劇の途中に差し挟まれるアランの追憶や過去のエピソードが、アランの人生の波瀾万丈さを物語ってくれます。小さい頃から爆弾が好きで、それが原因で精神病院や爆弾工場、強制労働収容所に連れていかれ、革命運動やスパイ活動にも参加し、スターリンやフランコ将軍、ロバート・オッペンハイマー、ゴルバチョフ、レーガンといった大物と親交を深めるという奇想天外な人生を送ってきたのでした。老人ホームの介護職員は誰も知らない人生。それはアランだけに限ったことではなく、多かれ少なかれ、100歳まで生きているということは、それだけ豊かな物語があるということなのです。

 

私たちはこうして長く生きてきた人の人生に思いを馳せてみるべきだと思います。100年も生きると、たくさんの人々の人生もそれだけ交錯しているわけで、人生がいかに偶然であり、ときに運命的であり、アランの母の遺言のように、「考えても仕方がない」ものであるかということが分かります。そして、私たちは知るべきだと思います。生きるということが、いかに幸運の積み重ねであり、だからこそ言葉にできないほど素晴らしいということを。

 


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