教え方のサイクルと山本五十六の話

湘南ケアカレッジには、男性の看護師の先生がふたりいます。湘南ケアカレッジの看護師の先生は全員男性です、と言い換えてもいいかもしれません。ふたりとも紹介で入ってきてくださったのですが、本当に気持ちが良く、魅力的な人であり先生です。先日、実務者研修の「医療的ケアの教員講習会」を受けに行ってもらったあと、新宿にて3人で食事をしました。私たちはほぼ同じ年ということもあり、傍から見ると、普通に友だち同士で飲みに来ているようだったと思いますが(笑)、実務者研修のあり方について熱く語り合い、素晴らしいアイデアも出てきました。実務者研修をただの実務者研修にしない、という決意を私も新たにしました。そんな話し合いの中、教え方のサイクルについて話は及びました。


ちなみに、教え方のサイクルというのは、講師会で毎回お伝えしている、相手に伝えるための手順であり流れのことです。教えるとか教育という大げさなことだけではなく、誰かに何かを伝えたいと思ったとき、このようにすると上手く伝わるよという基本です。当たり前と言えば当たり前なのですが、私が教育の世界で仕事をしてきた実感で言うと、この教え方のサイクルを知らない人の方が多く、知っていても実行できていない人がほとんどでした。これから学校の教員になろうとしている人でさえ、知らないというか、教えてもらっていないのです。世の中の教育やマネジメントというものが、いかに非科学的に行われているかということだと思います。

 

それはさておき、私が驚いたのは、「この前の講師会で教えてもらった教え方のサイクル、これいいですよね。すごく良くできていると思います。山本五十六の言っていることと同じですよ」と村井先生がおっしゃったことでした。私が講師会でお話ししたことが届いていたことがまず嬉しかったのと、さらに山本五十六という名前が出てきたことに驚かされたのです。実は、この教え方のサイクルの元には、山本五十六という人物の思想があります。

 

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。

 

山本五十六は海軍の軍人でしたが、当時としてはかなり先進的な思想を持ち、上の言葉を見てみても、軍隊教育とはほど遠い、先の先を見据えた、本質的な教育法に気づいていたということが分かります。今とは全く時代が違う中でのこの発想ですから、どれだけ彼が優れた人間であったのか、私は想像するしかありません。今でも軍隊のようなトップダウンの教育を行っている、企業や施設や学校はたくさんありますよね(笑)。

 

実は、上の名言には続きがあります。


話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 

上の一文は人の育て方、下の一文は人やチームのマネジメントの仕方だと思います。自分が教えて、育てて、実らせた人が、同じように他の人を教え、育て、実らせていくサイクルができると、世の中は大きく変わっていきます。そう考えると、知識や考え方を伝えるだけが教育ではなく、教えてもらった人が育って、さらに誰かに教えていくことができるようになって、初めて教育のサイクルは完成するのかもしれませんね。