教卓のない教室(後編)

前篇・後篇に分けてまで書くことかとも思いますが(笑)、湘南ケアカレッジの教室には教卓がない件についてです。前篇では教卓があることのメリットを書きましたが、これらに対して、今回の後篇では、教卓を使わないことの良い点を3つほど挙げてみます。

 

1、   生徒さんたちとの距離感が近くなる

2、   生徒さんたちに伝えたいことが届きやすくなる

3、   生徒さんたちと同じ目線で話すことができる

 

これだけで明らかだと思いますが、教卓があることのメリットは教える側にとっての視点であり、教卓を使わないことの良い点は生徒さんたちからの視点です。先生方にとって教えやすいということは大切ですが、それとは別に、授業を受ける生徒さんたちから見た視点で考えてみることも大切だということですね。


1の生徒さんたちとの距離感が近くなるについては、先生と生徒さんたちとの間に物体がなければないほど、距離感が近くなるということです。これは生徒さんたちの立場になってみると良く分かるのですが、同じ距離で話していても、間に教卓があるのとないのとでは心の距離感が違ってくるのです。これは教卓に限ったことではなく、身近なところで言うと、パソコンや携帯電話が間にあったとしても、私たちはどこかで心の距離感が遠くなったように感じます。スピーカーとリスナーの間にはできるだけ何も置かないというのは、今や世界的な常識であり、たとえばTEDのようなスピーチの場では教卓などありませんし、マイクでさえなくして(小さくしたりヘッドフォン型にしたりして)います。

 

2の生徒さんたちに伝えたいことが届きやすくなるは、1と連動してくるのですが、たとえばボディラングエッジなどの非言語的コミュニケーションは、相手との間にできるだけ何もない方がより伝わりやすくなるということです。生徒さんたちは、先生の話している言葉だけから意味を受け取っているわけではなく、身振り手振りや言葉の間・抑揚、アイコンタクトなど全身から発せられるメッセージを知らず知らずのうちに感じているのです。そういう意味でも、同じことを同じように話したとしても、間に教卓があるかないかで伝わりやすさは違います。

 

3の生徒さんたちと同じ目線で話すことができるについては、教卓の後ろで話すと、どうしても腕を教卓に立てて話すことになり、上から物を話す姿勢に映ってしまいます。昔は教壇というものがあり、その上に教卓があり、つまり先生とは生徒より上から話す立場にあったのですが、今はそういう時代ではありません。逆に言うと、先生なんて大して偉くもないのですが、それを教卓から話すことで上下関係をはっきりさせようという意図があったのです。教卓をなくすことで、先生は生徒さんたちと同じ目線で想いを届けることができます。

 

ここまで教卓を使うメリットとデメリットについて書いてきましたが、ほとんどの学校関係者にとっては耳の痛い話だと思います。なぜなら、ほとんどの学校や教室において、未だに教卓が使われているからです。というよりも、むしろ教卓がない教室なんて想像できない、教卓を教室からなくすなんて考えたこともないという人の方が多いかもしれません。日本の教育業界というのは旧態依然としていて、案外、外の世界を知らないのです。でも、もし学校関係者でたまたまこのブログを読んでくれているならば、ぜひ1度、これまでの常識や思い込みを捨てて、教室から教卓をなくすことについて考えてみてください。たかだか教卓ひとつでと思うかもしれませんが、実は教卓ひとつで授業は大きく変わるのです。