ダイアログインザダークに行ってきました。

ダイヤログインザダークに行ってきました。年初からぜひ行ってみたいと思っていたにもかかわらず、いつの間にか2月になってしまいました…。ダイヤログインザダーク(以下、DID)に関する本は数冊読んでいて、かなりの前知識がありましたが、やはり光のない世界は私が想像していたものと少し違っていました。暗度100%の世界とはいっても、目が慣れてくるとうっすらと人や物の輪郭ぐらいは見えるのではと思っていましたが、全く見えませんでした。完全なる暗闇です。これまで「お先真っ暗」なんて表現を気軽に使っていましたが、本当の暗闇を知らなかっただけですね。本当の暗闇に置かれたとき、私たちには何が見えるのか。そんな哲学的な問いを胸に、知識や情報だけではなく体験を求めて、私はDIDの世界に足を踏み入れたのでした。

 

地下に降りて、お洒落なレストランのような入口をくぐると、少し広めの待合室があります。受付を済ませ、DIDの簡単な主旨を説明してもらい、携帯や財布も全てロッカーに預け、準備万端です。8名1グループが基本設定なのですが、私たちのグループは7名でした。私を含めて男性が5名、女性が2名という編成。年齢は若い方が多く、おそらく情報に敏感で、(あとから少しずつ分かってくるのですが)皆真面目な人たちでした。あっ、ここでいう真面目とは、世の中を正しく見てみたいという興味を持ち、自分の頭で考えて生きようと思っているということです。

 

暗闇の入り口の前に現れたのは、アテンドのちーさん。以前に紹介した「みるということ」の中にも登場されていたので、初めてお会いした気がしませんでした。とても気さくだけれど、しっかりもしていて、頼り甲斐のあるお姉さんという第一印象でした。このあたりは本の中の写真からは分からなかったところです。自分の好みの白杖を選び、いよいよ暗闇へと入っていきます。それぞれのメンバーが離れると怖いので、押し合いへし合いしながらも、密集して前へと進んでいきます。人が近くにいる存在の安心や体温の温かさを感じつつ、ボールを転がすゲームをしたり、手をつないで輪になったり、二人三脚をしたり、そのままブランコに乗ったりと、少しずつ暗闇にいることが楽しくなってきます。

 

そこからさらに移動して、皆で椅子に座ります。コーヒーブレイク。実際にはコーヒーがなくて残念でしたが、紅茶、ジンジャエール、りんごジュース、ビールの中から好きな飲み物を選び、お菓子も食べたい人は注文します。私はりんごジュースとお菓子を注文しました。飲んでみましたが、普通のりんごジュースでした(笑)。他の方は、味が濃いとおっしゃっていましたが、私は普段飲んでいるりんごジュースの味とほとんど変わりはなく感じました(すいません)。

 

その代わり、お菓子の中にポッキーとジャガリコ、もうひとつ触っただけでは何か分からないお菓子が入っており(周りの人は干し芋だと言っていました)、それを食べたときの不思議な感覚は、今までに味わったことのないものでした。りんごジュースやポッキー、ジャガリコは情報として(味も含めて)知っており、それらが見えなくても触感や味覚はそれほど大きくブレないのですが、視覚の情報として知らないものに関しては、私たちはゼロからそのものについて視覚以外の感覚を総動員して想像しなければならないのです。触ってみて、舐めてみて、匂いをかいでみて。それはより深く味わうことにつながっていきます。視覚障害のある方は、もしかしたらこのような感覚で世の中のひとつ一つを味わうことができているのかもしれません。

 

もうひとつ、暗闇の中ではその人の内面がよく見えると言われていましたが、私にとってはほぼ変わらないという感覚でした(すいません)。今回、一緒に行った方は普段と暗闇の中でも何も変わることなく、他のメンバーも暗闇の中と外に出てから話したときの印象も大きく違うということはありませんでした。もしかすると、私は仕事柄、その人の表面的(外見的)な情報だけではなく、内面的(心の中)を見なければならないという癖がついてしまっているからかもしれません。見た目の印象よりも、言葉の使い方や話している内容を重視すること。言葉の上で言っていることと、本当に伝えたいことは違うということ。まあ、私にとっては、たとえ姿形が異なったとしても、その人はその人であり、何も変わらないのだということが分かったのは喜ばしいことです。逆に言うと、人の内面というのはごまかせないということでもありますね。

 

「自分の良いところや悪いところも分かります」とアテンドのちーさんが言っていたとおり、普段も暗闇の中でも私自身の弱さや情けなさは変わりませんでした。「控えめですね」と言われましたが、そうなんです、押しが弱くて、自己表現が苦手で、他人に心を開けない、つまらない人間なのです。卑下しているわけではなく、40年も自分と付き合ってきていますので分かっていますし、内面はごまかせないのです。でも最近はようやく、自分の弱さや情けなさを力に変えることができるようになってきました。むしろ弱さこそが力に変わる、強いことは実は弱いのだということが分かってきました。なんだか哲学的ですね(笑)。

 

最後に、今回のテーマはLOVEでした。自分の好きなものを形づくってくださいと粘土を渡されましたので、私は触覚だけを頼りに馬をつくりました。そして、それについてお互いに語りました。枕をつくった人や食べる肉をつくった人、器を作った人など様々でした。敢えて言うと、テーマが大きすぎたのかもしれませんし、時間的な問題かもしれませんが、ただの好きレベルの感情を話したに過ぎず、愛について語るところまではいかなかったのではないでしょうか。もちろん、自分が好きなものには愛情があるということですが、愛を語るには、もう少し深い人間関係の中で、ゆっくりと時間を掛けて話し合うべきだと感じました。とっても素敵なテーマですけどね。

 

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