教えてもらった大切なこと

先日、2月短期クラスが終了しました。今春から新卒として介護の仕事をスタートする方々が多く、平均年齢が35歳ぐらいという比較的若いクラスでした。毎年この時期はこのような年齢構成のクラスになります。これまで介護のカの字も知らなかった若者たちが、自分が想像していた介護の世界とは全く違うことを知り、初日から最終日にかけて、表情や取り組みが大きく変わってゆくのを見るのは喜ばしいことです。もちろん若い方々だけではありませんが、彼ら彼女らのこれから先の長い職業人生を考えるにつけ、介護職員初任者研修で何がどう伝わるかはとても大切なことであり、私たちの責任も大きいと改めて思い知ります。最終日には皆さまからのメッセージ入りの色紙をいただきました。ありがとうございます!

 

私たちは教える立場ではありながら、いつも生徒さんたちに教えてもらっています。今回のクラスでも、ある生徒さんに教えてもらったことがあります。Yさんは介護関連の人材会社で働いていて、研修の一環として、湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修を受けてくれました。仕事をしながら遠くから通ってくれていたので、スーツで授業に来て、授業が終わったあと会社に戻るという毎日でした。そういう事情もあって、彼は革靴のまま実技演習を受けていました。そんな姿を見て私は、彼が研修を真剣に受けに来ていないのでは、会社に言われたから仕方なしに通っているのではと心配になりました。もし心ここに在らずのまま研修が終わってしまえば、彼の介護に対する考えは変わることなく、私たちは彼に何もしてあげられなかったことになります。そこで彼に思い切って提案してみました(橘川先生も同じように考えていたようです)。靴をこっそり置いて行っていいですよと。

 

翌々日から彼は運動靴を持ってきてくれるようになりました。革靴で来て、運動靴に履き替えて臨んでくれました。実技演習も佳境にさしかかっていましたので、タイミングとしても間に合ったと思います。授業が終わると、特別に彼の運動靴をこっそりと預かり、翌日来てくれたときに渡します。全員の荷物を預かるスペースはありませんし、紛失の恐れや土曜日、日曜日のクラスもある関係で、基本的には全て持ち帰りをお願いしているので(ご協力ありがとうございます)、特別に対応をしたことになります。そうすることで、彼が湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修に溶け込んでくれたらという一心です。

 

 

そんな彼から、私の誕生日にケーキをいただきました。個人的に渡すのは気が引けたらしく、先生から「このケーキはYさんからです。『村山さんにはお世話になっているから』とおっしゃっていましたよ」と聞かされて渡されました。私はただ彼の運動靴をこっそりと預かっただけなのに、お世話になっていると思ってくれたことが嬉しく、また彼がケーキ売り場でプレートに私の名前を入れてもらうことを頼んでいる姿を想像して思わず微笑んでしまいました。そして、こういう人と人とのやり取りが大切なのだと改めて思いました。忘れていたわけではないのですが、私はどこまで生徒さんひとり一人を見れているのだろうか、毎日の仕事や業務に目が行き、学校にとって最も大切な今ここにいる生徒さんたちとのやり取りが薄くなってしまっているのではないかと思い直しました。私の目が届かないところも多いので、その分、先生方がしっかりと見てくれていて本当に感謝しています。実はそういうことこそ、素晴らしい授業をするのと同じかそれ以上に、湘南ケアカレッジという学校における体験を形づくるのです。そんな大切なことを生徒さんから教えてもらいました。このケーキの美味しさは一生忘れることはないでしょう。