従来型とユニット型の違い

とある特別養護老人ホームに取材に行ったのですが、とある理由で掲載ができなくなってしまいました(涙)。従来型とユニット型のケアや働き方の違いについて、せっかく詳しく教えていただきましたので、そこだけは共有したいと思います。念のために説明しておくと、特別養護老人ホームは社会福祉法人などによって運営される公的な施設であり、寝たきりや要介護度が極めて高い方が利用されています。そのため、一旦入所された方は余生をこちらで過ごし、人生の最期を迎えることになります。特別養護老人ホーム、略して特養が「終の棲家」と呼ばれるのはそういうわけです。特別養護老人ホームにも従来型とユニット型の2つのタイプがあり、分かりやすく説明すると、従来型とはワンフロアに50名ぐらいの利用者さんがいて、居室は4人部屋の多床室(個室もあります)。ユニット型とはひとつのユニット(まとまり)が10名で構成され、居室は全て個室となります。そこまでは教科書にも書いてあることですが、実際のところ、働く人たちにとって、従来型とユニット型の違いはどこにあるのでしょうか。両者のメリットやデメリットは?どのようなタイプの人が合っているのでしょうか?

 

従来型は大人数が一堂に集まって、同じ時間に食事の介助をして、トイレ介助をして、一斉に入浴という感じなのに対し、ユニット型では利用者さんお一人ひとりの生活に合わせ、本人に意思決定をしてもらいながら介護をしていくことになります。その分、ひとり一人に関する情報量は圧倒的に多くなります。たとえば、食器を置く位置からお薬、ポータブルトイレを置く位置に至るまで、スタッフが細かく知っておかなければならないし、それを他のスタッフと共有することが求められます。

 

その他、従来型とユニット型の違いを下に大まかにまとめてみました。あくまでも一般的な従来型とユニット型の比較であり、施設ごとに若干の違いは生じることはご理解ください。

 

 

  従来型 ユニット型
ケア 大人数をまとめてケア ひとり1人を個別にケア
情報 情報量は比較的少ない 情報量多い
ケアの流れ 施設の流れに合わせて 本人の意思決定
残業 残業なし 残業あり 
 夜勤 16時間  8時間

 

これを見るだけでも、同じ特別養護老人ホームでも従来型とユニット型では大きな違いがあることが分かるはずです。ユニット型にも良いところもあり、(人によっては)良くないところもあります。

 

たとえば、ユニット型はなぜ残業があるかというと(もちろん残業代は出るし、長時間にわたる残業ということではない)、ひとり1人を個別にケアすることに由来します。こちらの時間の流れに合わせて介護をするのであれば、定時になったら次のシフトのスタッフと交代して帰ることが可能ですが、利用者本人の生活の流れに合わせるとすれば、ここまでは自分がやってから帰るということになり、さらに次のスタッフに対して個別の情報をしっかりと引き継がなければならない。また各ユニットの利用者さんごとに情報を密に共有するため、たとえば1階のスタッフがお休みになってしまった場合、他のユニットから応援に来てもらうということが簡単にはできず、そのユニット担当のスタッフ間で穴埋めしなければならない。誰かがひとりでも抜けると、それだけ他のスタッフに負荷が掛かることになります。

 

その方の生活に寄り添い、本人に意思決定をしてもらい、自立支援を支えるとはそういうことを含むのです。時間になったから私は帰りますと途中で放り出して帰れるはずがありません。それは仕事だからとか、責任感というニュアンスとは少し違って、普通に介護をするとそうなるということであり、実際に介護をしてみたら、むしろそうしたいと思うはずです。とはいっても、私たちは仕事として介護をしているので、利用者さんのたちの生活の流れの中で、次のシフトのスタッフにバトンタッチをする、ただそれだけの話です。

 

どういう人がユニット型向きなのか、と担当の方に聞いたところ、「履歴書に『じっくりと向き合いたい』というような介護に対する熱い想いが書いてある方ですかね」とおっしゃっていました。ユニット型は、利用者さんとじっくり向き合って介護をしたいというスタッフの想いに応えることができるということです。逆に言うと、そういう想いを持つ人が従来型の一斉介護の現場に入ると、自分のやりたい介護と現実のはざまで悩むことになるかもしれません。こう聞くと、従来型を批判しているように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。とにかくテキパキと仕事をしたい人には従来型の方が合っていますし、たくさんの利用者さんと関わることができるので、それだけ多くの経験を積むことができます。そして、何よりも定時に帰ることができ、夜勤のあとは2日間休むことができるのです。そうしたライフスタイルも含めて、従来型を選択するスタッフもいるそうです。

 

 

どうでしょう、特別養護老人ホームの従来型とユニット型の違い、そして働き方や求められている人材の違いが伝わりましたでしょうか?