ひとりじゃない。LOVEがある。【介護仕事百景】

卒業生の塚田光代さんが訪問に入っている現場を取材させてもらうために、「ヘルパーステーション千代田」をたずねた。事業部長の小林充さんとトイプードルの千代ちゃんに出迎えられ、事業所に到着するやいなや、塚田さんに同行することになった。利用者様のお宅は歩いて5分ほどの近くにあり、塚田さんは毎週金曜日に訪問しているという。塚田さんは湘南ケアカレッジができた2013年の7月生として卒業し、それ以来、ヘルパーステーション千代田で働き、今年で3年目を迎える。介護福祉士試験のことや実務者研修の話をしながら歩いていると、いつの間にか利用者様の住んでいるアパートに到着した。

 

「小竹さんこんにちは!おじゃまします」と明るく元気な挨拶と共に、塚田さんはドアを開け、玄関を通って、居室に入った。先ほどまで横になっていたという小竹さんが、私たちを温かく迎え入れてくれた。

 

「今日は塚田さんのお仕事ぶりを取材させてもらうために来ました」

と私が自己紹介すると、しばらくの間があって、

 

「よくやっているよ」

と返ってきた。

「最近は何も言わなくてもやってくれる。ほんとうに気が利くよ」

 

と塚田さんのことを褒めてくださった。このひと言で場の雰囲気が和み、塚田さんも普段どおりの姿を見せてくれるようになった。

「卵をお皿に割って、サランラップをかけ、電子レンジでチンすれば、美味しい目玉焼きができることを教えてもらったんですよ。ね、小竹さん?」と塚田さんが話を振ると、「そう、電子レンジでチンしたほうが速くて簡単にできる。俺は男だからチンとね」と小竹さんが難しい冗談で返す。

小竹さんは月の半分ぐらいはショートステイを利用しており、それ以外は自宅で暮らしている。ちょうど先週、先々週とショートステイに入っていたため、塚田さんと小竹さんが会うのは3週間ぶり。にもかかわらず、まるで昨日も来たようなテンポの良い会話のやり取りが行われているのは、小竹さんがとてもフレンドリーな方であることに加え、塚田さんの気さくなパーソナリティゆえであろう。

小竹さんは焼酎が大好き。自宅に帰ってくると、焼酎のボトルがが「おかえりなさい」と話しかけてきてくれるそうだ。「お酒は裏切らないからね」と、これまた冗談なのか冗談ではないのか分からないような冗談を言っている。

 

テーブルの上にはおでんの残りとお茶の焼酎割りがあった。最近はお弁当を買ってきても、ご飯はほとんど食べないそうだ。私の祖父もビールが大好きで、晩年は白米を食べなかったことを懐かしく思い出した。もちろん飲み過ぎはいけないが、小竹さんにとっては、お酒を飲めるかどうかは健康のバロメーターだそうだ。体調を崩してしまったときには、お酒が飲めなくなってしまい、塚田さんいわく、顔色も悪くなるのがはっきりと分かるそうだ。

 

「俺の絶好調は舌好調なんだ。分かるかな?」と小竹さんはまたまた冗談を飛ばしてくれた。そうこうしているうちに、塚田さんは言われたとおりに電子レンジで目玉焼きをつくり、テーブルの上に並べていた。

「それでは、また来週来ます!」とお別れの挨拶をして、私たちは小竹さんのお宅をあとにした。「楽しく会話できるし、私の知らなかったことも教えてもらったりして、小竹さんのところを訪問するのはいつも楽しいですよ」と塚田さんは帰り道で言った。おそらく小竹さんもそう思っているだろう。

 

ひとりで仕事をする方が、気が楽で、自分に合っている

「塚田さんは、なぜ最初から訪問介護を選んだのですか?」と私が聞くと、「私はみんなで一緒に働くというのがあまり好きじゃないんですよね。訪問介護は基本的にはひとりで仕事ができ、気が楽で、私には合っていると思いました」

 

なるほど、と私は思った。実は私もみんなで一緒に働くのが好きではない。ここでいうみんなで一緒というのは、同じ場所にたくさんの人間が集まって同時に働くということ。チームで力を合わせて働くことは必要だし、それこそが仕事の醍醐味であることは確かだが、ほんとうに大切な仕事はひとりでやりたい。なぜならば、別に人と一緒に働くことが嫌いなわけでは決してなく、周りの人々に気を遣ってしまうことで、エネルギーを費やしてしまうからだ。それが苦にならない、パフォーマンスが落ちないという人もいるので、どちらが良いということではなく、向いているかどうかの問題である。みんなで一緒に働くのが苦手な人にとって、訪問介護の働き方は向いているのである。

 

 

「そうはいっても、ずっとひとりということではなく、毎月の連絡会ではほぼ全員にお会いします。千代田(ヘルパーステーション千代田のこと)のヘルパーさんは皆、明るい人ばかりですよ」とも教えてくれた。

 

ヘルパー連絡会

ということで、年が明けた1月のヘルパー連絡会に参加させてもらった。大雪によって開催日が1日ずれたにもかかわらず、たくさんのヘルパーさんが続々と集まってきた。ヘルパーさんがこれだけ多く集まる事業所の連絡会は見たことがない。

 

「ヘルパーステーション千代田」は、相模原市で最も多い(常勤・非常勤を含め)70名というヘルパーが在籍し、介護保険対応が約140名、障害者総合支援法対応が約100名という利用者さんに対してサービスを提供している。全職員に対して介護福祉士の占める割合も相模原市でトップクラスである53%という数字を誇る。

 

にもかかわらず、ここ数年でヘルパーの人数は増えていないという。離職は少ないが、新しく入ってくる人が低迷していると理事長の小林功さんはいう。もちろん、手をこまねいているわけではなく、処遇改善加算を用いて時給にして150円のアップを実現した。月に120時間ほど働くヘルパーさんにとっては、18,000円ぐらいの給与アップにつながっている。

 

プロ意識に支えられて

「(ヘルパーステーション)千代田は皆さんのプロ意識に支えられていると実感しました」

 

ヘルパー連絡会は事業部長の小林充さんの挨拶から始まった。前日の大雪の日、ヘルパーステーション千代田がある相模原の中央区から、利用者さんの住んでいる古淵まで歩いて訪問したヘルパーさんの名前を挙げ、皆の前で称えていた。電車でいうと2つ先の駅。どれだけ雪が降っても、ヘルパーさんを必要として、待ってくれている利用者さんがいる。その期待になんとしてでも応えるのがプロである。

 

毎月1回開催されているヘルパー連絡会では、ヘルパーさんたちに参加してもらえるように、手を変え品を変え行われているという。実技研修をすることもあれば、年末は打ち上げになることもある。この日の内容は、1月度の報告とストレスに関する研修であった。介護保険部門と障害者総合支援法対応、居宅支援事業部門からそれぞれ1月に起こった出来事の報告があり、ヘルパーさんたちは真剣に耳を傾けている。実際のケースを出して、こういうことがあって、こういう形で対応したという具体的な報告なので、ヘルパーさんたちにとっては身の引き締まる話であり、また学びも大きいのだろう。

 

電動車いすの充電が1時間で切れてしまった利用者さんを迎えに行った話。修理に出して原因を調べてもらうと、前輪がどこかに当たって手前に曲がっていたことで、車体に擦れてしまい、そのせいで消費電力が大きくなっていたのではないかということ。

 

金銭トラブルの話。コーヒーをごちそうすると言われて断ると、今度は500円を渡そうとされたので、「お金をいただいてしまうと、私、(ヘルパーステーション)千代田をやめなくてはいけなくなるから。千代田をやめたらもらいに来ますね(笑)」と言って丁重に断ったそうだ。ヘルパーは絶対に金品を受け取ってはならない。

もの盗られ妄想のある認知症の利用者さんから、財布を盗まれたと疑われた話。オムツ代等は財布とは別のところに管理することにして、財布には絶対に触らないことに。ただし、一度疑念を持たれてしまうと続けられないので、ヘルパーさんは交代することにしたそうだ。

 

ポータブルトイレの話。高齢のご夫妻の旦那さまが、オムツを使うかポータブルトイレを使うかで迷っている。ポータブルトイレを使ってもらいたい(使いたい)という気持ちと、やっぱり無理かなという気持ちが交錯し、日々移り変わっていく。そんな気持ちに寄り添いながらも、オムツではなくぜひポータブルトイレに!というのが千代田の想いです、と明言されていた。その話を聞けただけで、湘南ケアカレッジも同志として嬉しい。

続いて、ストレスチェックとアンガ―マネージメントに関する研修。ストレスチェックは昨年の12月から50名以上の従業員がいる事業所には義務付けられている制度であるが、もうすでに取り組んでいる。しかも、誰か専門家を呼んで来るのではなく、(担当者を決めて)自分たちで学んだことを伝える形を取っているので二重の学びがある。

 

施設で働いているクラスメイトよりも稼いでいる

後日、事業部長の小林充さんと塚田さんに、卒業生の保田貞二さんも交えて、訪問介護についての話を聞かせてもらった。さながらヘルパーの座談会。訪問介護という仕事の楽しさや素晴らしさを知ってもらいたいという想いは皆一緒である。

 

保田さんはかつて寿司職人であった。湘南ケアカレッジに来るだいぶ前から、訪問介護の仕事をすることは決めていたという。男性ヘルパーとしての難しさや厳しさを尋ねると、「ないですね」とあっさりと流された。「むしろ男性にしかできない仕事の依頼がたくさん来ますし、私はどんな仕事も選り好みせず、断らないようにしています」と胸を張る。ヘルパーステーション千代田は同性介助が原則の障害者の介護やガイドヘルパーの仕事も受けているため、男性にも多くの仕事が回ってくる。

 

「施設系で働いている、同期のクラスメイトよりも私の方が稼いでいると思います」と保田さんは言う。

 

訪問介護は施設ほどまとまった収入を得られないと誤解されがちだが、そうではない。小林さんいわく、「うちは依頼を断らないことにしていることもあって、仕事量が多いので、ヘルパーさん本人の希望があれば、目いっぱい仕事をお願いすることにしています」。事業所の台所事情によってもちろん異なるが、ヘルパーステーション千代田に限って言えば、しっかりと働きたい人にとっては、仕事はたくさんあるということだ。

 

もちろん、訪問介護ならではの、細かい時間に分けた働き方もある。お子さまが学校に行っている間の9時から15時まで働きたいという主婦の方も多く、曜日と時間を固定して働くことができる。施設で働くときのように、夜勤があったり、シフトによって勤務の曜日や時間が定まらなかったりすることもない。また最近は、日中の仕事が終わってから18時から20時ぐらいまでの夜間帯でもうひと仕事して帰るというダブルワークの方もいるそうだ。

 

訪問介護の仕事はワンパターンではない

それから、塚田さんと保田さんが口を揃えて語ったのは、「訪問介護の仕事はワンパターンではないところが面白い」ということ。それは利用者さんが10人いれば10通りのルールがあって、ヘルパーはその方のお宅に行けば、そこのルールに合わせなければならない。同じ支援をするにも、Aというやり方をしなければならないときもあるし、Bというやり方を求められることもある。それが面白くて、自らの学びにもつながっていくという。「施設や上司のルールに合わせるのは嫌だけど、利用者さんのルールに合わせるのは面白いんだよね」と保田さんは語る。保田さんの言いたいことが痛いほど分かる。

 

児童クラブまでつくってしまう

最後に、ヘルパーステーション千代田の取り組みを紹介させていただこう。私が驚いたのは、今年の4月から児童クラブを運営するという話だ。ヘルパーさんたちの中には、小さなお子様を育てている方も多く、仕事をしている間にも預かってもらえる場所があれば働きやすいと考えて実現した。自分が働く事業所が運営している児童クラブに預けていると思うと、安心感がまるで違うのではないだろうか。環境を整えると口で言うのは簡単だが、こうして自前で児童クラブをつくってしまうのだから恐れ入る。

 

また、ブラザーシスター制度というものがある。これは常勤のヘルパーさんが、7、8人の非常勤ヘルパーさんの担当となり、あらゆる相談に乗るという制度である。育てる役割を担う側は責任を感じるし、担当が決まっている方が相談しやすいだろう。この制度も3、4年ぐらいかけて、ようやく定着しつつあるという。こういった話を聞いていると、小林さんが伝えたいことは、「ひとりじゃない」ということなのだと思う。訪問介護は孤独な仕事だと思われがちだが、そうではない。ひとりで仕事をするのは間違いないけれど、孤独ではない。それは事業所のサポートであったり、利用者さんやその家族とのやり取りであったり、他のヘルパーさんたちとの関係であったりする。ヘルパーさんはひとりじゃない。塚田さんや保田さん、そして小林さんたちの笑顔を見て、私はそう思った。

最後に理事長の小林功さんの言葉で締めくくりたい。

 

「ホームヘルパーの仕事は、身体介護や生活援助だけではありません。利用者さんのできるところの観察、意欲の引き出し、それができるように生活場面をつくり出していくことへの適切な働きかけから、これからの人生の可能性を考え、希望を育ててもらうことがホームヘルパーの仕事の専門性なのです。人間らしく生きていくためには、LOVEが必要。それを感じながら仕事をしていきたいと思うのは、介護の仕事に就く人たちの共通の想いだと思います」

 

そう、ホームヘルパーの仕事は愛という感情に溢れた仕事なのだ。

採用情報

施設・事業所名称

ヘルパーステーション千代田

サービス形態 訪問介護
勤務場所 相模原市中央区中央千代田2-2-15 メイプルビル3
最寄り駅・アクセス

JR橋本線 相模原駅よりバスで10

募集職種 訪問介護員
雇用形態

非常勤

仕事内容

要介護者、障がい者の利用者宅に訪問し、身体介護や家事援助の介護全般を行う。

直行直帰のお仕事です。

給与

時給1,300円~

ボーナス

7月、12月の2回支給

勤務時間

働くことのできる時間に合わせて応相談

休日

応相談

資格

介護職員初任者研修以上

見学 OK
夜勤 なし
交通費 自宅から利用者宅の距離で設定あり
社会保険 120時間以上で社保加入
車通勤 あり
昇給 資格・経験要件あり
選考プロセス

面接にて選考

求める人物像

人が好きでコミュニケーション闊達な方

その他

訪問介護は「人」で成り立つ業種です。

超高齢社会に向け、ヘルパーは貴重な社会資源であると同時に、人のお役にたてる非常にやりがいのある仕事です。

ひとり仕事の不安を払しょくするためにサポートもしていきます。

 

★ヘルパーステーション千代田に興味がある、もしくは働いてみたい方は、以下のメールフォームにて応募、お問い合わせください。