「朝4時起きで、すべてがうまく回りだす」

卒業生さんから渡されて読んでみました。たぶん私との会話の中で、「車を運転すると眠ってしまうので免許を返上したんですよ」と言った言葉を聞いて、私の睡眠事情を心配してくれたのだと思います。たしかに、(たぶん社会人になってからだと思いますが)どのような場面でもついウトウトしてしまうことが多くなりました。朝型夜型とか、自律神経うんぬんではなく、ただ単に睡眠不足によるものでした。子どもの頃から、暇さえあれば寝ていた私の身体にとって、働き始めてからの睡眠時間の短さは耐えられなかったのでしょう。面白くない映画はすぐに寝てしまいますし、重要な会議中にも眠ってしまうことでも有名でした(笑)。最近でこそ十分な睡眠をとれるようになりましたが、その頃の私は、遅く寝て早く起きるという、好んでやっているわけではないショートタイムスリーパーだったのです。

20代後半から30代にかけての働き方は、今思えば異常でした。24時45分の終電に飛び乗って帰り、風呂に入って、何だかんだで寝るのは2時から3時のあいだ。朝は6時半に起きて、7時半までに出社していました。なんでそんなことになるのかと不思議に思う方もいるかもしれませんが、そうしないと(そうしても)終わらない仕事が世の中にはあるのですね。私も訳が分かりませんでした。土日もなく仕事をしていましたので、毎日3~4時間睡眠の日々がエンドレスに続きました。睡眠欲というものはとても強いものであり、もしかすると食欲以上かもしれないと感じ、眠れないことが人を精神的に追い詰めることも知りました。毎日、朦朧とした意識の中で生きていました。

 

このような働き方をしていては、自分がつぶれてしまう。若くて体力があり余っていたからこそ頑張れたのですが、うつになりかけましたし、この働き方をこの先ずっと続けることはどう考えても難しいと思いました。そこで、極端な朝型にしてみることにも挑戦しました。4時か5時ぐらいに起きて、人が起きていない時間に仕事を片付けるという計画です。この計画は1週間ぐらいで肉体が悲鳴を上げて断念しました。そもそも他の人よりも1時間は早く出社していたわけで、さらに1時間や2時間早く起きたところで、終わらない仕事の場合はその分、睡眠時間が減るだけでした。逆に仕事を全て終わらせてから寝るという計画も、仕事が終わらずに眠れないということで挫折しました。つまり、終わらない仕事には朝型も夜型もなかったのでした。

 

どれだけ効率的に仕事をしても、睡眠時間を削ってみても、終わらない仕事は終わらなかったのでした。最終的に終わらない仕事が終わったのは、私がその企業を辞めたときでした。子どもの誕生やひょんな事件がきっかけで、そろそろ次のステップに進むべきだと決めたのですが、あのときは自分の置かれていた蟻地獄から自分で働き方を変えて抜け出すことは結局できませんでした。でもこの時期の経験を通して、働き方について考えるようになったのです。働き方を考えることは、生き方を考えることでもあります。朝型にしてみたりといった小さな工夫も、つまり、生き方を自分で考えて選ぶということですね。

 

 

もっと大きなところで言うと、なぜ働く時間は9時から17時までと決まっているのか。なぜ週休2日なのか。なぜ私たちはいったん社会に入ると、長期間の休暇を取ったり、仕事をやめて大学に通ったり留学したりすることが困難なのか。働き続けることは、そんなにも美徳であり、自分の人生を豊かにするのか、などなど。日本人の働き方はあまりに画一的であり、息苦しいのです。これだけ社会が成熟したにもかかわらず、こんなにも働き方が貧しい国も珍しいですね。私たちにできることは、なぜ何のために働くのか、その働き方に未来はあるのか、誰かを幸せにするのかなど、自分自身の働き方をもう一度、真剣に見つめ直すことだと思います。そうすることで、私たちの働き方は変わり、生き方も変わり、社会が変わってくるのです。