誕生日ケーキの裏話

湘南ケアカレッジには、先生方と生徒さんたちの誕生日を祝うというイベントがあります。学校に来ている期間中にたまたま誕生日が当たった場合、バースデーソングを歌ってもらい、誕生日ケーキを贈られ、クラス全員から祝福してもらいます。湘南ケアカレッジに来て良かったと、少しでも思い出に残してもらえるように考えたイベントです。

7月短期クラスに通ってくださったIさんは、お申し込みの際に、「娘がとても楽しそうに通っているのを見て、私もやってみなければと思ったんです。たしか去年の暮れ、12月ぐらいに通っていたと思うんだけど…、なあ、お母さん?」と電話の向こうにいる奥さまに確認したところ、「そう、誕生日ケーキをいただいたって言っていたよ」というお母さまの声が聞こえました。そこで娘さんが12月短期クラスのIさんであることが発覚したのです。そのときは、研修の内容ではなく、誕生日ケーキの方が印象に残っているのだと少し残念に思ったのですが、あとからよく考えてみると、予期せぬ自分だけのためのイベントだけに、それは思い出に残るのだろうな、それだけ嬉しかったのだと思いを改めました。つまり、彼女が湘南ケアカレッジに通って、楽しく学んだ思い出の象徴として、誕生日ケーキがあるということです。

 

その1つ前の6月短期クラスでは、Sさんの誕生日のお祝いをしました。Sさんは4月短期クラスの卒業生さんの紹介で来てくださいました。卒業生の紹介で来てくれた生徒さんには特に、ケアカレに来て良かったと思ってもらいたいので、誕生日祝いができる偶然を喜ばしく思っていました。その日はいつもどおり、盛大にお祝いをしました。そして、6月短期クラスが終わらんとする最終日、Sさんが改めて御礼を言いに来てくださいました。「あの日、ケーキを持って帰って家族に見せると、小さな娘がお祝いをしようと言って、ロウソクを立ててくれたんです。あのケーキがなければ、あの日は何もないまま終わっていたかもしれません。久しぶりに家族に誕生日祝いをしてもらえました」とおっしゃってくださいました。Iさんの例もそうでしたが、誕生日ケーキを贈ることで、生徒さんの背景にある家族とも学校での出来事や喜びを共有できるのだと知りました。

 

以前にも書きましたが、この誕生日祝いのイベントは、今から20年前、私がかつて関わっていた子どもの教育現場(塾)での出来事がきっかけとなっています。そこでは生徒さんの誕生日にカードを書いて渡すということを行っていたのですが、最初はあまり大したこととは考えておらず、正直に言うと、そうすると決められているからやるという心持ちでした。もっと正直に言うと、他にやるべきことあるんじゃないのと心の中では思っていました。

 

あるとき、中学校2年生の女子生徒の誕生日がやってきました。仕事のひとつとしてメッセージを書き、カードを渡し、おめでとうと伝えたところ、「こんなことしてくれるなんて嬉しい!すごくいい塾だね!」と思いのほか喜んでくれたのでした。普段はあまり感情を表に出さず、何を考えているのか分かりにくいタイプの女の子でしたので、彼女が満面の笑みで素直に嬉しいと言ってくれたことに私は驚きました。誕生日を祝ってもらうということは、これほどに嬉しいことなのだと。人の気持ちを想像することさえできなかった自分の底の浅さを思い知らされたのでした。

 

 

それ以来、どの職場に行っても、誕生日を祝うというイベントを自ら積極的に行うようになりました。大手の資格スクールにいたとき、先生たちの誕生日を祝うのはいいけど人数が増えるとできなくなるよ、カード代は誰が払うの?誕生日ケーキなんてバカじゃないの。生徒さんの誕生日を祝うなんてもっての外だと反対されましたが、先生方の誕生日にカードを送ることだけは押し切って始めました。そんなことしてどうすると言う人に、中学2年生の彼女の笑顔と感情をいくら伝えても完全に理解してもらうことは難しいのですが、世の中にはお金や効率よりも大切なものはたくさんあると思うのです。それは誰かに喜んでもらうことや人生の思い出に残ることであったりするはずです。