つくられた体験ではなく

全身性障害者ガイドヘルパー養成研修が終わりました。今年に入って第3回目にして、ついに雨が降ってしまいました。心配された台風が去って一安心と思いきや、秋雨前線が続けてやってきたのです。残念ながら午前中は室内での練習になりましたが(これも意外と好評でした)、午後からは奇跡的に雨雲が去ってくれ、無事に外に出てゆくことができました。参加してくださった皆さまの、日ごろの行いが良いからですね(笑)。ぬかるんで滑りやすい地面の中、大変だったとは思いますが、だからこそ学びも大きかったのではないでしょうか。

 

驚いたのは、雨にもかかわらず、テンションが落ちるどころか、誰もが完全装備でやる気満々でいてくれたこと。雨のことばかり気にしていたのは、私だけだったのかもしれません。先生方もよりいっそう、生徒さんたちのやる気に応えたいと思ってくれていましたし、生徒さん全員が、ガイドヘルプは楽しくなければならないという基本を理解してくださっていたということですね。何よりも、皆さまが晴れやかな顔で教室に無事に戻ってきてくださったことが嬉しかったです。

 

最後の挨拶でもお話ししたように、午後に行われた、ペアごとにプランを立てて、好きなところに行ってもらうという外出支援の体験は湘南ケアカレッジだけでしかできません。なぜかというと、普通の学校であれば、危ないという理由で避けられてしまうからです。何かあったらどうするの?というひと言で、ほとんどの企画はボツになり、つまらない内容の研修になってしまうのです。でも、良く考えてみると、この研修を終えて資格を取ったら、明日から実際のガイドヘルプに入る人もいるのですから、きちんと外で車いすを押す練習や体験をしておかないと、そちらの方が危ないと思うのです。

 

振り返りのグループワークにて、「緊張して肩が凝りました。今でも心臓がバクバクしています」とおっしゃっていた生徒さんもいたように、実際のところ、皆さん、細心の注意を払って、安全かつ慎重に行動してくださるので危なくはないのです。小野寺先生がまとめで言っていたように、慣れてきた頃がいちばん危ないので、慣れてきたときにこそ、もう1度、基本に立ち返って確認するべきです。

 

個別に好きなところに外出することで、それぞれが個別の体験をすることができます。今回車いすで街に繰り出した13組のペアは、場所も違えば、人や状況も違う中で、それぞれに異なった体験をしたはずです。そして、それぞれの学びもまた違うはずです。これが先生が付いて団体で行動すると、私たちが見せたいもの、教えたいことばかりが優先されてしまい、つくられた体験になってしまうのです。生徒さんたちが自分の目で見て、触って、ときには失敗して、感じることができなくなってしまいます。

 

 

「妹は車いすの生活をしていますが、いつも私の誕生日のプレゼントを買いにいってくれます。今日は私が車いすで妹へのプレゼントを選びました。言葉にできない気持ちがこみあげてきて、涙が出そうでした」と感想に書いてくださった生徒さんがいました。本当に貴重な体験ですし、自分たちで行動しなければ決して味わうことのない感情だと思います。彼女のアンケートを読んで、この研修を行ってよかったと素直に感謝しました。