ケアカレ美術館に新しい作品が展示されました。南町田のモンベル内で行われた「LaLa LaMano展」にて初めて観て、その繊細さと大胆さが入り混じった作風に圧倒された、稲田萌子さんの作品になります。2010年に栃木県立美術館で開催された「イノセンス いのちに向き合うアート」やニューヨークのアウトサイダー アート フェアに出品されるなど、大活躍をされているアーティストです。昨年末にクラフト工房LaManoに直接伺って、何枚か作品を見せてもらった上で、最もケアカレの教室に合いそうなものを選びました。これでケアカレ美術館の5作品目にあたります。これからも1年に1作品ずつぐらい加えていきたいと思います。
一昨年、クラフト工房LaManoを訪れた際、もっといろいろな形で経済が循環していくべきだと感じました。たとえ障害があっても、人に買ってもらえる商品や作品をつくることはできるし、私たちがそういった商品や作品を目にして、買うことができる場も必要です。そのあたりをクラフト工房LaManoさんは見事にサポートしているのが伝わってきます。
逆に言えば、私たちもその商品や作品を障害のある人たちがつくったからではなく、純粋にほしいからという理由で買うべきです。大量生産、大量消費の社会にはうんざりですし、かといって寄付やお情けも好みではありません。それだけの価値があるものに、それに見合う対価をお支払いすることが、誰にとっても理想的なあり方です。そういう関係でなければ、長続きしないからでもあります。
教室に飾られた稲田さんの作品を眺めると、心が洗われるような気持ちになります。白いキャンバスと絵の具があれば、誰でも描けそうな絵ではありますが、たぶんそうではないでしょう。私は自分がキャンバスに向き合ったときのことを想像してみます。まずどの色をどこに落とすことから始めるべきか、大いに悩むはずです。その次の色や大きさは?その次は?そんな風に描いてみても、稲田さんの作品にあるような躍動感は失われてしまうはずです。それでは、彼女はどのような心境で描いているのでしょうか。私には想像することが難しいのです。そんなとき私は自分という人間のつまらなさを感じ、しかしそれと共に、どこか心が開放されたような気持ちにもなるのです。
絵と一緒に稲田さんからのメッセージが届きました。こういう人間的なやりとりができるのも嬉しいですね。