卒業生の岩佐まりさんが、読売新聞の「ケアノート」に登場していると、佐々木先生が教えてくれました。持ってきてくれた切り抜きを読んでみると、改めて頑張っているなあと感心させられ、私たちも刺激を受け、励まされるように感じます。もちろん私たちだけではなく、彼女の言葉や生き方、そして存在に刺激を受け、励まされる人たちがたくさんいるはずです。おそらく彼女は自らその役を買って出たのだと思いますが、周りの目を気にして隠したり、問題を抱え込むのではなく、外に向かって一歩前に踏み出したその勇気に敬意を表します。自分たちのことだけでも大変なのに、同じような状況で困っている人たちの助けにもなりたいと考える彼女を私たちは応援しています。
岩佐さんの活動を通して、私も家族介護で困難を抱えている人たちが世の中にはこんなにもいるという事実を知りました。私が思っているよりも遥かに多くの人々が、家族の介護に面し、困っていることすら分かってもらえない、そんな想いを抱えて生きているのです。それは今に始まったことではなく、私の祖母も曾祖母の介護をずっとしていたように、古今東西ずっと行われていたことですが、表に出てこないから、見えない人には見えなかっただけのこと。最近になってようやく、岩佐さんのような一歩前に出た人たちのおかげで、少しずつですが社会の中で見えるようになってきたのです。
7月短期クラスの生徒さんが、教室に貼ってあった岩佐さんの記事を読んで、「私もまったく同じでした」と教えてくれました。彼女のお母さまも、岩佐さんのお母さまがそうであったように、50代で若年性アルツハイマー型認知症を発症したそうです。その当時は、若年性や認知症という言葉や病名すらありませんでしたので、今とは比べものにならないほど途方に暮れたはずです。やかんを繰り返し焦がしたり、外に出て行って迷子になってしまうなどは日常茶飯事だったそうです。その生徒さんは口にはしませんでしたが、ひとりで抱え込まなければならないことが、共に立ち向かえる仲間がいなかったことが最も辛かったのではないでしょうか。
岩佐さんのブログを読んで励まされている卒業生さんもたくさんいて、そのような形で卒業生さん同士がつながっていることも嬉しく思います。「岩佐さんの記事が載っていました。ちょうどお休みが取れたので、横浜で7月17日に行われる講演会に行ってきます」というメールも頂戴しました。私も予定がずらせそうなので参加してきます。いつかケアカレにも来てもらって、卒業生さんたちに向けて、家族の介護について話してもらいたいと思っています。介護の現場で働いている卒業生さんにとっては、家族の生の声を聞くチャンスですし、また同じく家族介護をしている卒業生さんは、岩佐さんのどうせなら楽しく介護をしたいという姿勢に共感するはずです。