迷ったら困難な方をとる

人生は判断や決断の連続であり、そんな中、私は迷ったらより困難な方をとることにしています。簡単にできそうなことや楽な方ではなく、自分にできるのかと怯んでしまうぐらいのことやチャレンジングな方を選ぶということです。(私を含め)人間は楽をして生きていきたいと思うのが常であり、困難な方をとるのは本能に反しているとは思うのですが、それでも迷ったときには敢えて難しい方に行くように心がけています。なぜかというと、楽な方を選ぶと尻すぼみしてしまいそうな一方で、困難な方をとった方がより自分自身が鍛えられて力がつき、活躍の場や幸せにできる人たちが増え、将来的にはより楽しく生きていけるようになる気がするからです。

 

先日、介護職員初任者研修を受けて、その後、介護のお仕事に初めて就こうとして悩まれている卒業生さんと話しました。お付き合いのある2つの施設を見学してもらい、面接まで進み、どちらからも内定の通知を受けたのですが、1つに決めかねて相談に来られました。ぜいたくな悩みですが、どちらも素晴らしい施設であり、条件面もほとんど変わりません。とはいえ、2つの施設で働くわけにもいかないため、最終的には本人自身が1つを選ばなければなりません。その決断のヒントとして、直感的に選ぶ(ワクワクする方を選ぶ)ことと迷ったら困難な方をとる(チャレンジングな方をとる)ことをお伝えしました。

 

私は教育関係の仕事にずっとたずさわってきました。2度目の転職の際、最後まで迷って、先に採用が決まっていたある学校の新人研修が始まってから1週間してごめんなさいをして、他の学校に移ったことを思い出しました。先に決まっていたのは、映像授業を全国展開している大学受験の予備校でした。とても革新的なスタイルであり、時代の流れもそちらに来ているのも魅力的で、ある意味、勝ち組に乗るとすればという邪な気持ちもあって入社を快諾しました。ところが、研修を受けたり実際の現場で働いてみたりするうちに、これまで自分がやってきたことの延長線上で仕事ができてしまう感覚がありました。ほとんどのことはマニュアル化されており、決められた仕事を時間内でこなせば、定時に帰ることもできそうでした。

 

それはそれで楽なのですが、できることをルーティーンのように毎日繰り返して、そこに明るい未来はあるのだろうか、と自問する日々でした。そんなとき、少しだけ後に内定をいただいていた中学生対象の塾の現場を見させてもらったところ、これは大変だと感じました。今まで自分にはあると思っていたコミュニケーションスキルでは、子どもたちには全く通用しなかったのです。もう1度、子どもたちの中で揉まれて、ひとつの教室をつくってゆく中で失敗も成功体験も味わいたいと思いました。映像予備校には大変ご迷惑をかけてしまったのですが、頭を下げて、入社して10日で辞めさせてもらいました。

 

 

今から思うと、この決断は私にとって非常に良かったと思います。深夜まで子どもたちや大学生の先生方とボロボロになるまで格闘し、30も中盤になって俺は何をやっているんだろうと愚痴をこぼしたこともありましたが、あのときのおよそ5年間の経験は私の血となり肉となりました。子どもたちに教えてもらったことや教室運営の成功・失敗体験がなければ、今の湘南ケアカレッジはなかったと思います。あのとき困難な方をとったことが、今になって生きています。自分にできそうな楽な方ではなく、自分が試されるチャレンジングな方を選んだ、あのときの自分に感謝したいと思います。