「村山さん、どこの施設でも共通のことですが、業務の覚え方がいつも上手くいきません。必ずと言ってもいいほど、失敗します。自分が引っ込み思案の性格もあり、質問がタイミング良くできません。何か良い方法はありますか?」
グループホームに転職して、昨年末より仕事を始めた卒業生さんより、上の質問を受けました。Facebookのメッセージで簡単にお答えさせていただいたのですが、彼だけの課題ではないと感じ、この場を借りてもう少し詳しく皆さまにもお伝えしたいと思います。
彼の抱えている問題をひと言で言うと、教えてもらい方についてです。教え方ではなく、教えてもらい方。世の中には教え方に関する情報やノウハウは溢れていますが、教えてもらい方については皆無に近いのが実状です。なぜ教えてもらい方については誰も語らないのでしょうか?彼の言うとおり、新しい仕事を始めるにあたって、またはこれからさらに成長していくにあたって、上手に教えてもらうことは私たちにとって大切なことです。
実を言うと、私も教えてもらい下手でした。スポーツにおいても、勉強においても、仕事においても同じでした。無意味にプライドが高いところがあって、全くできておらず、何も知らないにもかかわらず、上段者に教えを乞い、適切に教えてもらうことが苦手だったのです。そのため、自己流になってしまい、基礎が定着しなかったばかりに上達しなかったスポーツは数知れず、勉強も仕事ももっと追求できたはずの可能性を失ってしまいました。そんな私が30を超えてやっとのことで身につけた“教えてもらい方”ですから、皆さんにとっては当たり前のことかもしれません。話半分で聞いてもらえたら幸いです。
拍子抜けするかもしれませんが、何よりも大切なことは、「教えてもらえますか?」と言うことです。これは簡単に言えるようでなかなか言えない、魔法の言葉です。魔法の言葉だからって1度しか使えないということではなく、どんな局面やタイミングにおいても使えますし、何度言ったってよいのです。別に新人しか使えない言葉ではなく、ベテランになっても使うべき言葉です。世の中は知らないことばかりなのですから。
「教えてもらえますか?」と言って、教えてもらう姿勢ができたら、次は教えてもらったことを自分なりに噛み砕きます。理解できたこととできなかったことに分け、理解できたことは「ここはこういうことですよね?」とイメージを共有し、理解できなかったことは「ここはどういう意味ですか?もう1度、教えてください」と再度教えてもらいます。そうすると、相手はもう少し違った方法や伝え方で教えてくれるはずです。
そこから先は、同じことの繰り返しです。もう1度聞いて、理解できたことは確認し、それでも理解できなかったことを再び聞く。ここで大事なのは、理解できたことを言葉にして再確認(イメージを共有)することです。自分では分かったつもりでも、実は相手の伝えたかったこととは違ったなんてこともあるからです。何度か繰り返していくと、最後には教える人と教えてもらう人の抱く完成イメージがほぼ一致するはずです。
そして最後に、「ありがとうございます」とひと言添えるのを忘れないようにしましょう。