「グレイテスト・ショーマン」

最初から最後までアップテンポな音楽とストーリーで、2時間の映画がまるで30分ぐらいに感じてしまうほど。ミュージカルとしても、成功物語としても、エンターテイメントとしても楽しめる作品でした。障害者や人種に対する差別や偏見をテーマとして描いた映画であることは、あとから薄々感じた程度であり、一般的に論じられているほどの強いメッセージ性はなく、むしろ自然な形で人類愛が謳われているように私は受け取りました。障害者を障がい者や障碍者と記すような先回りの配慮をしてしまう人にとっては、この映画は誤解や違和感を生むかもしれません。いずれにしても、主人公のバーナムが言うように、「至高の芸術とは見るものを幸せにするもの」、ただそれだけなのです。

19世紀にサーカスを興して成功したPT・バーナムの半生を描いたストーリーです。小さい頃から極貧の日々を過ごしてきたバーナムは、令嬢と駆け落ち気味に結婚すると、なんとか成功しようとした末に、普通の人々とは違った姿形をした人たちを集めてショーをするアイデアを思いつきました。小人症の男性や髭の生えた女性、全身入れ墨の男、結合性の双子、大男など、パッと見ると目を背けたくなるような奇形の人たちです。

 

多くの称賛や歓声が生まれたものの、今とは違って社会の多様性に対する許容量がさらに少なかった時代でもあり、差別や偏見の声も激しく起こってしまいます。そのような外野の声や邪魔にも負けず、「THIS IS ME(これが私だ)」とプライドと負けない心を持って、踊り歌い続ける彼ら彼女らの姿には心を打たれ、共感し、応援したくなります。

 

そして、次第に、その姿にも違和感を覚えなくなるから不思議です。最初の登場シーンでは、怖いもの見たさというか、背筋が凍るような気味の悪さを感じさせる場面もありますが、駆られ彼女らが舞台に立って、人前で歌い踊り、喝采を受けるにつれて、その姿形が自然に感じるようになるのです。それは皆違って皆良いということではなく、それが個性だと言うつもりもなく、ただ単純に自然なのです。この映画が障害者や人種に対する偏見や差別を扱っているとは感じなかったのは、そういうわけだったのです。

 

 

私たちは慣れるのです。最初はその違いに拒否反応をしてしまうこともあるかもしれませんが、そこで壁をつくったり、避けたりするのではなく、話したり、触れ合ったり、一緒に過ごしてみることで違いに慣れてくるのです。多様性を受け入れたり、認めたりという高尚な志の前に、まず私たちは自分と違うことに対して慣れることが大切なのではないでしょうか。一緒に過ごすこと、共存することが偏見や差別をなくす第一歩になるはずです。そんな当たり前のことを教えてくれた映画でした。音楽が素晴らしいので、映画館でぜひ観てみてください!