100%信頼されるガイドヘルパーに

同行援護従業者養成研修の2日目は、初日に身につけた基礎知識や基本技能を外出して生かすことがテーマです。ただ漫然と外を歩き回っても退屈ですし、ガイドヘルプ本来の目的は余暇をいかに楽しく過ごしてもらうかということですので、こどもの国へ行くことにしました!こどもの国に入園して、歩き回ったり、吊り橋を渡ったり、アイスクリームを食べたり、記念撮影をしたりします。視覚障害のある方とガイドヘルパーが過ごすように、私たちも外出の研修を楽しみながら、あらゆる局面における実践的な学びを得るということです。しかも2日目は、全盲の畑山さんにも参加してもらい、実際の支援をひとり一人が体験させてもらい、当事者ならではの話を聞かせてもらいました。

会場から町田駅までペアを組んで、整列して歩いて向かい、切符を買って横浜線に乗り込み長津田駅に到着します。長津田駅の構内を利用させていただき、エスカレーターやエレベーターの乗り降り、切符の買い方を練習します。特にエスカレーターの乗降はとても難しいため、正しい支援の方法を身につけていただくため、ガイド役と利用者役をペアで交互になり、降りたり昇ったりを繰り返します。さすがに畑山さんを支援する番が回ってきたときは、どの生徒さんも緊張した面持ちで練習していました。

 

こどもの国線にはたくさんの親子が乗っています。そういった中でも、利用者さんには安全のために席に座っていただくことになりますが、混雑の中でどうやってスムーズに席まで誘導するのかも千種先生は教えてくれていました。人が両端にいて真ん中が空いている場合の座ってもらい方など、一つひとつの技術やノウハウがあるのだなあと感心しました。こどもの国駅に着いて、停止している電車を利用して、電車への乗り降りの練習もしました。初日に練習したまたぎの基本技能が生きてくる場面。声掛けを間違ったり、呼吸が合わないと危険ですね。

 

こどもの国の中に入ると、子ども連れの家族でにぎわっていました。できる限りアイマスクをしたままこどもの国内を歩き、吊り橋を渡ったり、ミルクプラントに行ってアイスクリームを食べたり(これが絶品!)、牧場に行って見学をしたりします。

 

その中で、ガイドヘルパーとして大切なことのひとつに、状況を説明することがあります。そのとき催し物があって楽しい音楽が流れていたり、子どもたちがバスケットボールをしていてボールが地面を打つ音が響いたり、周りからは小さい子どもたちが駆け回っている声が聞こえてきます。「子どもの声がして怖かった」と感想を書いてくれた生徒さんもいましたし、畑山さんも「子どもがいつぶつかってくるか分からない怖さは、たしかに私たちにもありますね」とおっしゃっていました。

 

こどもの国を堪能したあとは、再びこどもの国駅で電車の乗り降りの練習をして、町田の会場への帰途につきます。会場に戻ってきてからは、今日の振り返りをグループワーク形式で行いました。アイマスクをして利用者役になってみて気づいたこと、またガイドヘルパー役をやってみて学んだことを、それぞれに書き出してもらって発表しました。今回のクラスはとても優秀で、短い時間の中でしたが、多くの素晴らしい意見が出てきていました。

 

最後に、先生方からの言葉と、畑山さんから生徒さんに対するメッセージを伝えてもらいました。畑山さんは、「私たちを支援するために、これだけ多くの人々が一生懸命に学んでくれていることに驚きました」と始め、「この研修に参加した全員にガイドヘルパーさんになってください!」と最後にお願いをされていたように、同行援護従業者が足りない現状があります。

 

最も印象に残ったのは、「私は支援を受けるとき、ガイドヘルパーさんを100%信頼しています」という言葉です。今回の研修において、同行援護をするにあたって、利用者さんとガイドヘルパーとの間の信頼関係がどれだけ大切か分かったのではないでしょうか。利用者さんがあなたを100%信頼していると言ってくれているのですから、私たちはその信頼に応えられるようにならなければいけないということですね。

 

当事者である畑山さんの言葉には説得力があり、大きな意味が込められていました。視覚障害のある方が「障害者の心理」の科目を教える研修はあっても、(実技)演習に参加して一緒に練習をする研修はおそらく日本全国でもケアカレの同行援護従業者養成研修だけでしょう。実際に触れあってみること、直接に話をすることによってこそ、相互の理解は深まるという仮説があったからできたのです。

 

 

最後のアンケートにも「畑山さんとお会いでき、目の不自由な方の気持ちを直接お聞きできて、とても参考になりました」、「畑山さんにいろいろなことを教わりました」、「とても素晴らしい方で、お話ができて本当に良かったです」と書いてくれた生徒さんもいました。共に生きる社会は、知識や技術を得ることだけで作られるのではなく、当事者との関わりにおいて本当の意味で実現していくのです。