生徒さんの成功のお手伝い

昨年の11月短期クラスのKさんは、湘南ケアカレッジの紹介で入った施設でこの4月から働きながら、陸上競技を続けています。介護の仕事をしながら、仕事以外の時間を使って練習をし、ときには遠征に行き、大会に出場するという生活をしています。夢を追いかけ続けるだけではなく、現実的に生活をしていくために新しい仕事をスタートしました。彼の人生の中では、大変だけど輝かしい時代なのではないでしょうか。その彼が大会記録を出しましたと、施設の人事担当者からお便りが届きました。「私たち施設としても、最大限のバックアップをしていきたいと考えています」と心強いひと言も添えられていました。

 

彼が初めてケアカレに来てくれたのは、介護職員初任者研修の説明会でした。説明が終わったあと、残ってくれた彼とゆっくり話しました。長野から東京に出てきて、内定をもらっている病院で看護助手として働きながら、陸上競技を続けるつもりですと熱く語ってくれました。野球やバスケットボールなどの球技においては、社会人になってからも働きながら続けているという話は聞いたことがありますが、陸上の短距離走を社会人として続けるなんて初耳だったので、よく覚えています。そのときは、仕事と競技の両立は大変だけど頑張ってもらいたいと単純に思っていました。

 

雲行きがあやしくなったのは、彼がケアカレを卒業したあとのこと。働くことを予定していた病院が間近になって採用を控えることになり、突然内定が取り消され、彼は就職先を失ってしまったのです。彼にとってはまさかの宙ぶらりん状態でした。たまたま彼がクラスメイトと一緒にケアカレに遊びに来てくれたとき、そのような話をしてくれて、何とか力になりたいと思いました。私自身、仕事のあてのない時代を長く過ごしましたので、未来が見えないことに対する、若い彼の不安な気持ちが良く分かったからです。

 

応援(金銭的なバックアップ等)してくれなくてもいいので、周りの人たちが理解してくれる環境で働きたい、というのが彼の唯一の願いでした。介護の現場は勤務体制が複雑であり、ゆえにひとりの職員のためだけに特別にシフトを組むわけにいかない、と考える施設が多いのも事実です。どこまで互いが相談して妥協できるかが重要なポイントでした。

 

「介護仕事百景」を運営している影山さんがいくつかの施設に働きかけてくれた結果、マナーハウス横山台(座間さんや青竜さんたちが働いている特別養護老人ホーム)が、陸上競技を続けながら仕事をすることに対して理解を示してくれました。施設にとっても初めての採用形態だったはずですが、快く受け入れてくださったのです。

 

今春から彼は新卒のひとりとして真面目に働き、しっかりと練習したからこそ、大会記録を出すことができたのだと思います。その知らせを聞いただけで、彼が願っていたとおりになったのだと知りました。彼の希望を叶えることができたのです。私たちは世界観が変わるような授業を提供することだけではなく、さらにその先にある、生徒さんたちの成功のお手伝いができるようになったということでもあります。最高の福祉教育を提供し、その生徒さんに合った働き方や仕事を提供して、全てが上手く運べば、卒業生さんたちの人生をより良く変えることができるのですね。もちろん彼だけではなく、人生が変わったという卒業生さんが少しずつ現れてきて、私たちにできることはまだまだたくさんあるのだと教えてもらいました。