「この4月から介護の現場で働き始め、利用者さんと話す中で少しずつコミュニケーションが取れるようになりました。そんな中で、利用者さんが亡くなったりしたとき、どのように感情を出して良いものなのでしょうか?泣いていいものなのか、それとも表に出さない方がいいものなのか…」と、看護師の先生に質問をしてくれた生徒さんがいたそうです。とても良い質問だと思い、授業の中で「皆さんはどう考えますか?」と先生はクラスメイトにも問いました。それぞれが自分ごととして考えてくれて、「割り切る」「受け入れる」と言った生徒さんもいれば、「その人の死から次に向ける」と答えた生徒さんもいました。そこで先生は、看護学生で実習に行っていたときに受け持った、胃がん末期であった80代女性の話をしてくれました。
3週間の実習のうち、2週目が終わったあとの休日に彼女は亡くなりました。それを週明けの月曜日に知った当時看護学生であった先生は言葉になりませんでした。そして亡くなるまでの記録を振り返っていたとき、「お兄ちゃん今日いないの?」と土曜日の看護記録に記されていた彼女の言葉を目にしたのです。その記録を見たとき、先生は涙してしまったそうです。
「悲しいという感情は出して良いと思うし、むしろ感情を殺して、抑圧して感じとれない人になるよりは、感情のある、人間味のある人になってほしい。それがその人への弔いや感謝の気持ちだと思う。悔いがあるから、こうしてあげようとか、こうしたいと思うのではないかと思う。だからこの仕事を続けているのだと思う」と生徒さんに対して語ってくれました。
その翌日、先生からメールをもらいました。昨日、利用者(患者)さんの死について話したばかりなのに、今日このようなことがありました、と。7月短期クラスの生徒さんたちにも、ぜひお伝えくださいとのことですので、長くなりますが引用させていただきます。
ICUに3ヶ月ほどいた方が今日亡くなりました。YouTubeから洋楽を聞くのが唯一の楽しみで、僕のために僕のイチバン好きな曲を履歴の最初に置いてくれるのです。「いつでも聴きに来ていいよ」、「歌詞が良いよね」って言って。死期は確かに近かったのですが、今朝も挨拶できるものだと思っていました。
死亡確認が終わり、身を整えて(死後の処置)から霊安室へ移動しました。最初に家族が10名ほどいて、一人ずつ先に手を合わせました。次に医師3名が手を合わせたあとに、看護師が続きます。僕は手を合わせたあとに奥さまにお辞儀して、「ご愁傷さまです…」と言った瞬間、涙が溢れてしまいました。
「お疲れ様でした…本当によく耐えたと思います…僕は色々と学ばせて頂きました…」と奥さまへお伝えしました。感情の沸き起こりと涙で思うように言えず、一呼吸ずつ言っていました。奥さまは「ありがとうございました。本当に良くしてもらって…」と涙されていました。後に続く他の看護師も同様に手を合わせては涙していました。
昨日の質問にもう一度答えるとすれば、感情は素直に表出するべきであろうと改めて感じました。人と関わるからこそ、起こりうる現象だと思います。