趣味にも生きる

湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修、実務者研修では、コミュニケーションやアセスメントの一環として他己紹介を行っています。初任者研修では3日目、実務者研修は初日に行います。まずはペアを組んでいただき、相手のことを聞き出しつつ、その後、他のクラスメイトに対して相手の人となりや趣味などを紹介する。他己紹介をすることによって、ペアを組んだ相手の方と仲良くなれますし、他のクラスメイトのことも知ることができます。それまでは互いのことを知らずに緊張していた雰囲気が一気に和やかになり、クラスメイトに対する見方が変わってくるはずです。平面的にしか見えていなかったクラスメイトたちが、ひとり一人のことを深く知ることで、立体的に見えてくるから不思議です。これがコミュニケーションの効果ですね。

7月短期クラスの生徒さんたちも、たくさんの趣味をお持ちでした。十人いれば10の趣味があるのだなと毎回不思議に思わせられます。趣味の中には、私が知っているものもあれば、知らないものもあります。そのような趣味があるのだと、感心させられてしまいます。その中でも、クロスロジックの趣味には驚かされました。数字に合わせてマス目を塗りつぶしていくと、最後には何かしらの絵が完成しているそうです。これをやっているときには、没頭して無心になれるとのこと。翌日、実物を見せてもらったのですが、あまりのマス目の多さに、完成させるのにどれほどの時間が掛かったのだろうと圧倒されるほどの出来栄えでした。

佐々木先生の授業の中でも、介護の仕事にたずさわる人は特に、気晴らしや気分転換として趣味を持っているといいですねという話が出ます。ここでいう趣味とは、つまりクロスロジックのように、それをやっていると無心になれて、それ以外のことは忘れられる行為ということです。

 

私の場合、趣味と聞かれたら、映画鑑賞やビリヤードと答えることにしていますが、映画もそれほど頻繁に観に行くわけではありませんし、ビリヤードに関しては上手くプレイできないとストレスを感じてしまうのでもはや趣味とは言えないのかもしれません。もしかすると私にとっては、無心になれる洗濯ものを干したり畳んだり、食器を洗ったりすることが趣味なのでしょうか。それとも本を読むと気分転換になることもありますので、読書が趣味なのでしょうか。実はこうした文章を書くことも趣味なのかもしれません。そう考えると、趣味を持つというのは案外難しいものですね。

 

 

これからは、いくつかの仕事と趣味を同時に並行してゆく時代になると思います。これまでは若い頃は仕事をして家族を養い(または子どもを育てるなど)、60歳になって定年を迎えたり、子育てがひと段落したあとに、自分の趣味に専念したりしていました。ところが、私たちの寿命が延びて多くの人々が100年生きる時代が来ると、そのように人生を縦に割るような形では生きていけなくなります。仕事は身体が動くかぎり、できるだけ長く働き続けなければいけませんし、そうすると趣味に生きるはずだった定年後がなくなります。やりたいことがあるならば、できるだけ早くから、今すぐにでも初めて、同時並行に行っていくべきですね。これまでの縦割りの人生プランを横に倒して生きてゆくということ。難しくて大変かもしれませんが、それはそれで新しくて刺激的で楽しい人生プランになるのではないでしょうか。