時間がない

NHKハートネットTVで放映された「岩佐まりシングル介護 認知症の母と」を観ました。湘南ケアカレッジの卒業生でもある岩佐さんは、たまに学校にも顔を出してくれて、介護の未来やこれからやりたいことなどを話し合います。そのときは一人でやって来るため、3年前に出会ったいつもの明るい岩佐さんしか私の目には映りません。実際に岩佐さんとお母さまの在宅介護現場を垣間見るのは、こうした機会しかないのです。

 

番組を観た感想としては、「時間がないのだ」ということ。若年性アルツハイマー型の認知症を患う母と共に過ごす岩佐さんは、今こうしていられることが明日も続くとは思えない、もしかすると明日はないかもしれない、という時間軸で生きているのです。若年性アルツハイマー病は進行が速いということもありますが、彼女の目には母親と生きることで命の儚さのようなものが見えているのだと思います。私が漫然と過ごしたこの3年間に、彼女はどれだけの喜びや悲しみ、衰え、虚しさ、楽しさ等の喜怒哀楽や栄枯盛衰を味わってきたのでしょうか。彼女はそれを母親が与えてくれた社会勉強だと言っていました。

 

番組の最後に、「(母親が)私と一緒にいることが苦しくなったら、私の役割は終わりだと思っています。そのときはプロの手に委ねます。そうならないように(できるだけ長く一緒にいられるように)、私自身ももっと介護の知識や技術を学んでいきます」と岩佐さんは語っていました。司会の方々はこの言葉に驚きを隠せなかったようですが、それもそのはず。私の知る限りにおいて、このような切り口で語った家族介護者はいませんでした。介護者の愛情も大切ですが、もしかするとそれ以上に、在宅介護を続けていくためには介護の知識や技術が必要だということです。

 

「湘南ケアカレッジで学んだことが、どれだけ役に立ったか分かりません」と岩佐さんは言ってくれたことがあります。ケアカレに来る前から、すでに自らたくさんのことを学んでいた岩佐さんに、そう言ってもらえたのは光栄です。介護職員初任者研修で学ぶことが、在宅(家族)介護者にとっても大いに役に立ったことは、私たちにとって大きな自信にもなります。そしてこれから先は、岩佐さんと共に、介護職員初任者研修に来ることができない在宅介護者のための研修や学びの場を通したコミュニティをつくっていきたいと思います。時間はないのです。

 

☆再放送は8月23日(木)13時5分~13時35分です!

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