優しくなれた

先日、友人を連れて教室に来てくれた卒業生さんが、「優しくなれた気がします」とおっしゃってくれました。湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修を受ける前から、障害者の施設等での仕事をされていたそうですが、利用者さんに対する見方や考え方、接し方が、自分でも実感できるぐらいに変わり、優しくなれたということです。「お母さん、優しくなったねと言われました」と報告してくれた卒業生さんもかつてもいたように、研修のあとは多かれ少なかれ、内面的な変化が訪れるようです。それは世界観が変わる福祉教育を湘南ケアカレッジが提供できていることの表れであり、とても嬉しく思います。

 

ここでいう優しいとは、どういうことなのでしょうか。優しさにはさまざまな形があると思います。どのようなことがあってもニコニコしていること。相手が聞きたくないことを言わないこと。困っている人に手を差し伸べること。他者の気持ちを理解して声掛けをすることなど。人間であれば、本来誰にも備わっている資質であり、尽きることのないものです。私たちは誰もが、優しくありたいと願っているのではないでしょうか。

 

それでもなぜか、気がつくと優しさが失われていき、いつの間にか優しくない自分になっていたりします。それまでは普通だと思っていたことが、あとから考えると優しくなかったなと反省することもあるはずです。

 

優しさとは学ぶことができるものなのでしょう。たとえば、介護職にとっての優しさとは、利用者さんを知ることから始まります。利用者さんの生きてきた背景であったり、抱えている病気や障害であったりを知り、それに対して適切なケア(支援)を提供することが優しさです。ここは勘違いされやすいのですが、何から何までやってあげることが優しさではありません。本当の自立支援をするためには、他者のことを学び(知識)、支援方法について学ぶ(技術)ことが大切なのです。介護の世界には、まだ知識も技術も不足しているため、本当に優しい介護ができていないという現状もあります。

 

 

卒業生さんが優しくなれたと感じたのは、自分にとって知識と技術が身についたことが大きいのではないでしょうか。自分について学び、相手について学び、そして具体的な方法を学ぶ。それを今までの経験と重ねてみることで、自分にとっての本当の優しさが生まれてきたのです。そして、そのようにして生まれた優しさは、(差し出すかどうか)選ぶことができるものでもあり、またこの先も磨き続けていくべきものなのです。決して生まれつき優しい人がいるわけではなく、私たちは学びながら(または磨きながら)、勇気を持って優しさを差し出すことによって、優しくなれるのです。