夏休みの間に行われた介護職員初任者研修のクラスは、高校生がたくさん参加してくれており、10代から70代まで年齢の幅が広く、親と子を通りこして、親とひい孫が一緒に学ぶと言っても大げさではない雰囲気でした。様々な年代の人たちがフラットな関係性の中で共に学ぶのは、介護職員初任者研修の醍醐味の一つですが、とはいえ高校生が半分を占めるクラスをまとめるのは一筋縄ではいきません。たとえば、座って受ける講義の授業では、彼ら彼女らを1日集中して話を聞いてもらわなければならないから大変です。初日の望月先生は「寝かさない」工夫をしてくれたり、先生方も気合を入れて教えてくれたおかげで、ほとんどの高校生さんたちは頑張って聞いてくれていたのが印象的でした。
集団形式の授業で教えるとき、生徒さんを寝かさないことは重要です。特に子どもは正直なので、寝ているかどうかは授業の良し悪しを評価する指標になります。最初から寝ている生徒さんは参考外なのですが、最初は聞こうとしているにもかかわらず、途中から眠気を誘われて、ついには寝てしまうということは、その生徒さんにとっては授業がつまらないということです。どれだけ意味のあることを話していたとしても、生徒さんたちには届いていないということです。寝ている生徒さんが複数いるということは、先生にとっては、生徒さんが授業に集中できる工夫が足りないというサインでもあるのです。
それでは、講義形式の授業において、どのように工夫するかというと、オーソドックスなところでは以下のとおりです。
・話の中に問いかけを増やす
「○○って知っていますか?」、「○○だと思う人、手を挙げてください」など
・質問を投げかけて、誰かに答えてもらう
「AとBとどちらが正しいと思いますか、○○さん?」、「○○さん、△△についてどう思いますか?」など
・グループワークを取り入れる
「それでは、○○について、それぞれの意見を交わしてみましょう」、「意見がたくさん出たら、それをまとめて皆の前で発表して共有してもらいます」など
・実際にやってもらう
「今お話しした○○について、実際にお隣同士でやってみましょう」、「それでは、皆でやってみますよ」など
・テストを取り入れる
「ここまで話したことが分かっているか、確認のため、簡単なテストをしてみましょう」など
それ以外にも、深呼吸をしてもらったり、休憩を入れたり、簡単な体操をして体を動かしたりなど、体を動かすなども工夫のひとつです。授業の中にサプライズを入れたりしてドキッとさせるのもありですが、上記の工夫に比べると、効果は一時的です。
寝かせない授業のポイントは、やはり受け身にさせず、主体的に取り組んでもらうということに尽きるのです。教える人は、つい自分の伝えたいことを一方的に話して満足してしまいがちですが、相手に本気で伝えたいと思うならば、まずは相手の姿勢をこちらに向けることが重要なのです。そのために様々な工夫をするのが良い授業であり、授業中に寝てしまう生徒さんはその行為自体は褒められたものではありませんが、実は「主体的に学べるような工夫をしてくれていますか?」と私たちに問うているのかもしれません。