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「アール・ブリュット立川2019」に行ってきました。僕がアール・ブリュットに興味があることを知っていた望月先生が「立川でこんなのやっていましたよ」と教えてくださって、最終日に何とか間に合いました。とはいえ、最終日は最も大きな展示室が17時で終わってしまっていて、残念なことに特設会場とエスカレーター脇の限られた展示しか観ることができませんでした。それでも、今回の展覧会のクオリティの高さと熱気が伝わってきましたので、ぜひ来年はしっかりと全ての作品を鑑賞したいと思います。
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JR立川駅を出て、目の前にある伊勢丹の入り口すぐのところに、谷良則さんによる「なにものでもないもの」という作品が飾ってありました。大きな納豆を積み上げたように見えてしまいます。谷さんの他の作品はそれぞれに全く形状が異なり、統一感がないのがテーマのようです。どのような形の作品にしようとか、ひとつの作品を作り上げたということもなく、始まりも終わりもない制作活動だそう。「これは何?」と尋ねてみると、「なにものでもないもの」と返ってきたところから、このタイトルは付けられました。
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久下智香さんによる、白い布にカラフルな糸が刺繍された作品はこれまでに観たことのないものです。誰よりも右手を動かして作るからこそ、ここまでの迫力と存在感が出せるのでしょう。
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若山由美子さんの風景画ひとつ一つはシンプルでも、数えきれないほどの多作が集まり、彼女のひとつの心象風景を表現しています。
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相葉章義さんのTシャツとトートバックは立体感のある派手さで、使う者を選びますね。
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岩崎岳さんのTシャツは、個人的にはバスキアの作品のようで好きです。
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鬼頭和則さんの作品は岡本太郎さんのような迫力があります。呼吸をするように絵を描くという柴田将人さんが描く蛇は、これだけ集まっても可愛らしい。
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出山千恵子さんのクッションは、一見するとイケアにもありそうですが、同じものがひとつとしてない模様が商業製品に対するアンチテーゼとして個性を放っています。
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小畑智洋さんのポストカードは完成度が高く、そのまま売ってもらいたくなりました。
彼ら彼女らは決して有名なアーティストではありません。多くの人々にその作品が知られることになれば良いし、そうなればお金を払ってでも作品を欲しがる人たちも出てくるはずです。個人的にはアール・ブリュットもそのような流れが出てきてもらいたいと思っていますが、現実的にはそうではありません。彼ら彼女らは何者でもないのです。それで良いのだと思います。
私の好きなニューヨークの写真家ソール・ライターは、「私は無視されることに自分の人生を費やした。それで、いつもとても幸福だった。無視されることは偉大な特権である」と語りました。また、「雨粒に包まれた窓の方が、私にとっては有名人の写真より面白い」とも言いまいた。彼の言いたいことは私にも良く分かりますし、アール・ブリュットとはそういうことなのかもしれません。そして、私たちの人生も同じだと思うのです。