温かい心で

先日、修了した8月日曜日クラスには、高校生の女の子たちが7名ほど通ってくれていました。いかにも女子高生という感じで、キャピキャピしている(表現が古い?)子もいれば大人びている子やまだ幼さを残している子もいました。途中で休みがちになったり、授業中に体調を崩して帰ってしまったりする生徒さんが続出した時期もありましたが、最後は落ち着いてきて、それぞれの感じ方で研修を楽しんでくれていたようです。

 

彼女たちに関して、とても意外だと思ったことがありました。

佐々木先生が教えてくれているターミナルケアの授業の最後に、『エンディングノート』という映画を観てもらっていますが、最近はあまり涙する生徒さんが多くなくて不思議に思っていたところ、今回のクラスでは高校生の女の子のひとりが大泣きしていました(彼女はお母さんが卒業生です)。授業が終わってから、周りの女の子たちと「泣けたよね」などと話していた中で、「孫とお別れするシーンはやばい」と話していたので、私は衝撃を受けました。

 

実は私もあのシーンが最も印象に残っていて、死は自分の肉体が動かなくなって、存在が消えてしまうことではなく、大切な人に会えなくなることが悲しくて辛いのです。それは周りの人たちにとっても同じだと思います。映画の中でも主人公の砂田さんにとっては、孫の成長を見ることができないのが悲しいのです。あのシーンは、まだ孫や子どもがいない若い人たちには分かりにくいと高をくくっていたのですが、彼女たちにも響いていたことが驚きでした。私は素直に、彼女たちは人の気持ちが分かって、共感することができる、繊細な心を持った、良い子なのだなと思ったのです。

 

彼女たちとは全く逆の例ですが、10月からスタートした実務者研修には70代後半の生徒さんが2人参加してくれています。そのひとりの女性は、事前に教室を見学に来て申し込みをしてくれました。話を聞いていると、今の施設で利用者さんたちのためにもっと良い介護をしたいけどやらせてもらえないので、もっと勉強して見返したいと思って来た、とかなり前向きなのです。もう一人の男性は、ケアマネジャーを持っていて、自分で施設を立ち上げることになったけれど、介護の実技的なことは全くと言ってよいほど分からないので、学び直しのために実務者研修を受けることにしたと言います。2人とも70代後半にして、学ぶ意欲や向上心が衰えないのは凄いと私は素直に思いました。

 

 

女子高校生たちは未熟なところがあったり、ご高齢のお二人は話が聞きとりにくかったり、肉体的にできないことがあったりしますが、私は温かい心で見守りたいと思いました。温かい心で見守るなんていうと、上から目線だと思われるかもしれませんが、そうではなく、明らかに私の方が下なのです。私が高校生だった頃、彼女たちのような共感力もなく、福祉のこころも学んでいませんでした。自分勝手なだけの子どもだったと思います。そして、私が70代になり後期高齢者となったとき、学校に通い、20代、30代のクラスメイトに混じって、勉強する意欲が残っているかどうか自信はありません。そもそも、身体を学校に運んで動かせるかどうか怪しいですし、新しいことを学べるだけ頭がしっかりしているか不安です。過去の自分と照らし合わせ、自分の30年後を想像してみると、彼ら彼女たちに対するリスペクトの気持ちしか湧いてきません。自分ごととして考え、これからも温かい心で生徒さんたちを見守っていきたいと思います。

 

PS

上の写真は8月日曜クラスの皆さまからいただいた、メッセージ入りの色紙です。「人との関わりについて考え直すきっかけにもなった」、「3H、3Kを心に刻んで介護に携わっていきたい」、「たくさんの気づきを得ました」、「介護への気持ちが変わった」、「本当に心からこの学校に来て良かったと思えた」、「終わってしまうのが名残惜しい」など、皆さんの温かい言葉に励まされながらこれからも頑張ります。ありがとうございました。