最前線で働く人たちへのリスペクトを

先日、ボディメカニクス講座の2級が開催されました。昨年からスタートして、今年で2年目になりますが、今回で100名近くの方が2級まで修了したことになります。来年には1級を開催し、ボディメカニクスの素晴らしさを人々に伝える(教える)ことができる人を養成していきたいと願います。今回のボディメカニクス講座には、介護職員初任者研修を5年前に卒業した生徒さんが来てくれて、「介護福祉士になりましたよ!」と遅ればせながら報告をしてくれました。

 

彼女は卒業してからすぐに有料ホームで働き始め、そのままずっと同じ施設で働き、一昨年、介護福祉士になったそうです。ケアカレに来たときは、(当然のことながら)介護については何も知らない、明るくてノリの良い女性でしたが、今や「介護は奥が深いですね」と深遠な言葉を発するほどに成長されました。ケアカレを卒業してから介護の仕事を続け、介護福祉士まで取り、新しい領域となる視覚障害者の支援を学びに来てくれたのは嬉しい限りです。しかし、「介護職員初任者研修の当時のクラスメイトはほとんど皆、介護の仕事を辞めてしまいましたよ」と寂しそうに教えてくれました。

 

LINEでつながっているクラスメイトたちの中で、彼女以外の全員が、5年経った今、介護の仕事から離れてしまっているということです。介護の一度も仕事をしなかったのではなく、一旦は介護の仕事をやってみたにもかかわらず続かなかった、別の仕事に移ってしまった。おそらく10名~15名に1人か2人しか5年続かない計算になります。これはかなり由々しき事態なのではないかと思う一方、それが現実なのかもしれないと感じます。どれだけ学校として介護の世界の素晴らしさを伝えても、介護現場に出てしまうと現実の壁にぶち当たって、理想は敗れてしまう。どれだけ多くの卒業生さんを育てても、まるでザルから抜け落ちるようにして、介護の仕事を辞めてしまうということです。このままですと、介護現場の人手不足はますます進んでしまいます。

 

お給料の低さや慢性的な人手不足による忙しさ、周りのスタッフとの人間関係など、一旦介護の仕事に就いた人が辞めてしまう理由は様々で、人それぞれなのだと思います。しかし、はっきりと言えることは、現場で最前線に立つ仕事は大変だということです。これは他のどの業種でも同じことですが、つまり対人援助職(接客業とは少し異なる)の肉体的、精神的な負担は私たちが想像する以上に大きいです。わずかな期間であれば続けられても、長く続けるためには、それだけのモチベーションや息抜き、目的や目標がなければならないのです。

 

 

そして何よりも、最前線で働く人たちに対するリスペクトが必要だと私は思います。現場から退いて、一歩外から関わっている人たちは、現場で働く人たちに対するリスペクトを忘れてはいけません。自分にはできないことをやってくれている人に対して、尊敬と感謝の気持ちを忘れない。それは長い目で見て、自分たちの住む世界をよりよくすることにつながっていくと信じています。