天職の3つの条件

ふらりと教室に立ち寄ってくれた卒業生さんが、「介護の仕事は天職だと思います」とさらりとおっしゃいました。その言葉を聞けて素直に嬉しかったですし、と同時に、天職とは何だろう?どうすれば自分にとっての天職だと思えるのだろうかという問いが、むくむくと湧きあがりました。私もなかなか天職を見つけるために紆余曲折し、天職について考えていた期間は長いので、自分なりの答えを書いてみたいと思います。

 

 

その仕事が自分にとって天職であるための条件は3つあります。

ひとつは、お客さんとの波長が合うかどうかです。介護の仕事であれば、利用者さんとの波長が合うかどうか。波長というと抽象的ですが、他に相応しい言葉が見つからないので波長とさせてください。その仕事や業界には必ずお客さんがいて、お客さんのためにサービスを提供するわけなので、お客さんと良い関係が築けないと苦しいわけです。しかもお客さんに対する共感や尊敬、愛着のようなものが感じられないと、良い関係は長続きしませんね。もちろん一方通行ではなく、お客さんからの共感や尊敬、愛着、感謝などが得られないと、やってられない日が来るでしょう。

 

主にお客さんとの波長が大切ですが、一緒に仕事をする仲間(スタッフ)との波長が合うかどうかも大切です。共感や尊敬、愛着のようなものがお互いに感じられるかどうか。上下関係や年齢、性別など関係なく、一緒に働く人たちと波長が合わなければ苦しいですよね。実はお客さんとの波長が合うというベクトルが一致していれば、自然と一緒に働く人たちとの波長も合うものです(もちろんそうではない仲間も一定数いるでしょうが…)。お客さんとは波長が合わないけど、一緒に仕事をする仲間とだけ合うという場合、おそらくそれはその仕事が天職なわけではなく、職場に友だちがいるというだけの話でしょう。あくまでもお客さんとの関係が主で、一緒に仕事をする仲間との関係が従です。

 

私の場合は、大学を卒業してから塾業界に入りました。学生の頃から子どもの教育にはたずさわっていたので、自然な流れというか、就職氷河期の真っただ中で、それしか仕事が見つからなかったのです。最初の仕事は1年で辞めることになり、その後、知り合いの紹介で大手の介護スクールで働かせてもらうことになり、もしかすると自分に合っているかもと感じました。5年間、介護のスクールで働き、その後もう一度、子どもの教育に戻りました。最終的に、私は教えること自体は好きですが、子どもたちよりも大人(特に介護の世界の人たち、もしくは介護の世界に入ろうする人たち)の方が波長は合うと感じました。正直に言うと、子どもたちと接していると一時的には楽しいし、愛着もあるのですが、尊敬はあまり感じられませんでした。不思議と、一緒に働く仲間たちにも同じような感覚を抱いていました。それに対して、介護の学校でたずさわるお客さん(生徒さん)と一緒に働く仲間(先生方)は、とても良い人ばかりで、共感や愛着のようなものだけではなく、尊敬の気持ちも抱くことができたのですよね。これはあくまでも私にとっての波長であり、個人の感覚ですが、同じ教育の業界でも仕事によって波長の合う合わないは全く異なるということですね。

 

2つめは、その仕事をする中で常に学びがあるかどうかです。以前に「私が独自に発見した、一番ラクな天職の見つけ方」というブログを紹介しつつ、仕事の中に気づきがあるかどうかは、自分がその仕事を通して成長していけるかどうかに大きな影響を与えるため、とても重要だと述べました。お客さんや一緒に働く仲間と波長が合うだけでも十分ですが、もっと長い目で見て、その仕事を生涯やり続けるとすれば、普段働いている中で少しずつでも学びや気づきがあることで、自分自身が成長する感触がつかめるはずです。ただ単に学びや気づきがあると楽しいですし、過去の自分と比べて、より望ましい人間になっている実感は仕事を通して得られる喜びのひとつです。逆に、学びや気づきがなくなってしまうとその仕事はつまらなくなってしまいます。つまらない仕事は長く続けられませんから天職にはなりませんね。

 

最後の3つめは、その仕事が他の人たちよりも上手くできるかどうかです。2つ目の仕事の中に学びや気づきがあるかとも関係してきますが、成長して上達することで、他の人たちには及ばないレベルで仕事が上手にできたり、それによって誰かに喜ばれ、褒められ、認められ、感謝されたりします。私は学生時代に始めたビリヤードが好きでしたし、自分なりに気づきや学びもあったのですが、最終的には誰よりも上手くなることはできませんでした。アスリートの世界のように頂点に立たなくても良いのですが、やはりお金をもらう(稼ぐ)以上は、少なくとも他の人たちよりも上手にできる必要があるのだと気づかされたのでした。

 

 

あなたにとって3つの条件すべてが当てはまれば、その仕事は間違いなく天職でしょうし、まずは1つだけでも当てはまれば、天職かもしれないと思って良いはずです。そもそも簡単に天職など見つかるはずもありません。私もアルバイトを含めていくつかの職を転々としながら、ようやく自分にとっての天職に近いものを掴めた気がしています。今、天職が見つかっているラッキーな人はその仕事の中で己をどんどん磨いていってもらいたいですし、まだ見つかっていない人は探し続けて下さい。3つの条件を意識しながら探し続けていると、いつか見つかるはずですよ。