たまたま実務者研修の授業の日に誕生日を迎えた生徒さんがいたので、お祝いをさせてもらいました。「33歳になりました。なんで誕生日なのに研修があるのだと思っていましたが、来て良かったです」と言ってもらえて嬉しかったですし、それに対して望月先生が「男は33からです!」と返していたのも面白かったです。授業が終わってから、男は33から発言について聞いてみると、「施設のおじいちゃんが、『男は80から』だと言っていたので」とのこと。その応用編だったのですね。それにしても、80になっても、これからが人生楽しいのだと思って生きる前向きさが素敵ですね。
そんな話をしていると、私が若かりし頃、先輩から「男は40から」だと真面目な顔をして言われた記憶が蘇ってきました。その先輩とはビリヤード仲間で、彼は東京藝術大学を首席で卒業し、ドイツに留学した経験もあり、ホルン奏者として様々な交響楽団に所属して演奏することを仕事としていました。当時私は20代でフラフラしていましたし、先輩は30代でNHK交響楽団に入ることが叶わずにモヤモヤしていた時期でした。
ビリヤード場からの帰り道で、何かの話の流れの中で、「村山くん、男は40からだから今は踏ん張りどころだよ」と言われたのです。「そうなんですね」と返しつつも、まだ30代にすらなっていない私にとって、まさか自分が40代になるなんて想像もしていませんでしたし、そんな私にとって「男は40から」という言葉は信じがたいものでした。心の底では、先輩は30になっても芽が出ていないから、男は40からなんて言っているんじゃないのという冷めた気持ちも少なからずあったはずです。
今から思えば、先輩の言葉は正しかったです。20代の頃は苦難と苦悩の連続でしたが、40代になってあらゆる意味で解放されました。人と人のつながりも広がりましたし、やりたいこともできるようになり、身も心も自由になりました。昔ほど全力で走れなくなったり、白髪が増えてきたりしますが、相対的には40代になってからの方が幸せです。先輩とはしばらく会っていませんが、おそらく今、立派な演奏者として活躍しているのではないでしょうか。20代の頃は20代こそが幸せのピークだと勝手に思い込んでいたのですが、実際にはそうではなかったのです。20代の自分には40代の自分のことなど、何ひとつ分からないのですね。
同じことは80代の自分に向けても言えるのかもしれません。さすがに80になってこれからということはないだろうと、先ほどの話は半ば冗談として書きましたが、もしかすると本当に80からなのかもしれません。年を取ると衰えてしまって、人生は悪い方向に向かってしまうと考えるのは、私たちがまだ若いからなのかもしれません。幸せ度を尋ねてみると、年齢が上がるほど幸せと答える人が増えるという調査もあるぐらいですから。それは性別を問わないはずです。今を生きることも大切ですが、人生はこれからもっと楽しくなると未来に希望を抱くことができると、誰もがもっと幸せになれますね。