関わりこそ喜び

先日、卒業生のMさんから突然、電話がかかってきました。久しぶりのMさんからの電話は第一声、「今まで黙っていたことがありまして…」と始まりました。

 

「実は私の息子がそちらでお世話になりました」

 

 

おそらく私が驚くと思ったはずです。「Kくんですよね」と答えると、「知っていたのですか!」と逆に驚かれました。私もその事実を知ったときは驚きましたよ。ダイレクトメールの発送作業をしているときに、二人が同じ住所であることが発覚しました。Mさんも若かったので、お子さんではないかもしれないし、親戚の子どもと同居しているのかなと疑問は残ったのですが、とにかく血はつながっていることは明らかでした。そんな経緯を説明すると、Mさんは「すいません、息子から口止めされていて言えなかったんです笑」と教えてくれました。コンセプトマガジンにも出てもらったようにお母さんともコミュニケーションが取れていましたし、息子のKくんとは何度もランチに行って、向こうが勝手に私のことを「たっちゃん」と呼ぶほどの仲です(笑)。

 

Mさん「息子は今、Sという施設で働いていまして」

私 「はい、知っています。とても頑張っていて、施設長さんからの評価も高いです」

Mさん「そうなんですね。良かったです。実は、ようやく正社員になれました」

私「知ってます。Sは正社員になるのが難しいですが、なれると給与が格段に高くなりますので良かったですね」

Mさん「はい、ありがとうございます。それから、実は結婚して、このあいだ2人目の子どもが生まれまして」

私「おめでとうございます。1人目は知っていましたけど、第2子が誕生したのですね」

Mさん「子どものことも知っていたのですね(笑)」

私「奥様と付き合い始めた頃から話は聞いていますよ。それにしても、Kくんがケアカレに来てくれてから、介護の仕事を始めて、結婚して子どもができるまで速かったですね」

Mさん「あっという間でしたね」

私「Kくんがケアカレに来てくれたときはヤンチャで、エプロンを付けてもらうのに苦労しましたが、その時から心は優しい奴だなと思っていましたよ」

Mさん「彼は優しいかもしれませんね。でもケアカレにお願いした頃は、悪い友だちと付き合ったりしていて大変でした。育て方を間違えたかと本気で悩んでいましたから。おかげさまで今は別人のようですし、親子関係も良好です」

私「良かったです。先生方もKくんのこと好きなので、喜ぶと思いますよ」

 

そんな会話をして、電話を切りました。Mさんは息子のKくんが正社員になったことを報告するきっかけとして、全てを告白してくれたのだと思います。たしかにケアカレに来てくれてからKくんは大きく変わりましたが、本人が自分の力と意志で変わったのが実際のところで、たまたまそのタイミングにケアカレがあったということにすぎません。私たちとしては、その過程に並走できたことで、たくさんの喜びや学びを得ることができました。学校は表面的には知識や技術を教える場ですが、もっと深いところには、人間としての関わりがあり、それこそがお互いの喜びにつながるのです。

 

 

この前、藤田先生と話していたときも、「関わりがあったからこそ、僕もここまでやってこれました」とおっしゃっていましたし、橘川先生も「生徒さんとのかかわりが大切だと改めて気づかされました」と言ってくれました。僕も心からそう思います。これまでずっと教育にたずさわってきましたが、人と人とのかかわりこそが喜びであると本当の意味で分かったのは、ケアカレを9年間続けてきたからです。何をどう教えたかはあくまでも一時的なものであって、私たちの間にずっと残るのは関わりなのです。だからこそ、何百人、何千人、何万人の生徒さんが研修を受けたとしても、右から左へと流れるように入って出てしまっては、そこには何の価値もありません。学校運営としては、生徒さんたちの人数は多い方が良いのですが、最終的に私たちの記憶に残って、人生にとって意味を持つのは、人間同士の関わりだけなのかもしれません。これからも人と人との関わりを大切にする学校でありたいと思います。