介護の学校の選び方(受講料編)

介護の学校なんて、どこも一緒だと思われているかもしれませんが、そうではありません。同じように見えるかもしれませんが、学校ごとにそれぞれ違っていて、同じ学校でも教室ごとに違いはあるのが実際のところです。介護職員初任者や実務者研修という大きな枠組みは同じでも、教えている内容や教室(先生やクラスメイトたち)の雰囲気から、学校の生徒さんたちに対する想いや運営のされ方、アフターフォローまで、同じ介護を教える学校であってもここまで違うのかと思うぐらい違うのです。

 

私は全国展開している大手の介護スクールで働いたことがあり、介護の学校を運営している知り合いたちもいて、これまでたくさんの学校や教室を見てきました。その経験を生かし、今は自分で介護の学校を立ち上げて運営していますので、介護・福祉教育の世界については誰よりも知っているつもりです。せっかく学ぶのであれば、自分に合った学校や教室を選んでもらいたいと思い、介護のスクール業界の内幕を少しだけお見せします。我田引水にならないよう、できるだけ公平中立に生の情報をお伝えしたいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

 

まず今回は、受講料と呼ばれる料金について。「同じ資格が取れる研修なのに、なぜこんなにも料金が違うの?」という質問をよくいただきます。たしかにスクーリングの日数も時間数もほぼ同じで、最終的には介護職員初任者研修(または実務者研修)という資格が取得できるにもかかわらず、学校によって数万円の受講料の差があるのは不思議ですよね。初めてこの世界に一歩踏み出すという方にとっても、介護のスクール業界の内情を詳しく知らない人にとっても(ほとんどはそうだと思います)、受講料の差を生む理由は見えにくいはずです。

 

ただ安ければ良いという方は、ここから先を読む必要はありません。1円でも安い学校を探し、自宅から近い教室に申し込みをしてください。そうではなく、安いのは安い理由があって、高いのにも高い理由があることを知った上で、何を大事にするかという自分の優先順位によって学校や教室を選びたいという方のみ読み進めてください。

 

◆高いものが良い、安いものは悪いというわけではない

結論から述べると、安ければ研修のクオリティが低いということではなく、高いからと言ってサポートが手厚かったり、教室等の環境が良いということでもありません。残念ながら、高い受講料を払えば払うほど、それに応じた良い教育や環境が返ってくるということではないのです。それは介護の教育サービスがモノ(製品)ではないことに由来します。モノ(製品)であれば、どれだけ良い材料や部品、素材を使っているかで全体のクオリティも違ってきますので、良いものは値段が高くなるのは当然ですが、教育はそうとはいえないのが本当のところです。

 

教育のような目に見えないサービスをつくるのは主に人であるからこそ、全体のクオリティはそこにいる人たちの知識や技術、情熱や想い、ホスピタリティという目に見えないものに大きく影響されてしまいます。そのような構造の中では、高いものが良い、安いものは悪いとは一概には言い切れないのです。高くても悪いものもあれば、安くても良いものもあるのです。

 

◆あまり高すぎるのも安すぎるのも良くない

ここで覚えておいてもらいたいのは、あまり高すぎるのも安すぎるのも良くないということです。そもそも高すぎる受講料は手が出ないという方もいらっしゃると思いますが、高すぎるのにはわけがあります。利益を追求しすぎていたり、組織が大きすぎて(人件費等が掛かりすぎて)安くできなかったり、高いものは良いものだと思わせる高価格戦略であったりします。それぞれの理由について詳しくは説明しませんが、教育サービスは高ければ良いものとは限らない以上、高すぎる受講料を選ぶ必要はありません。

 

それに対して、安すぎる受講料も避けた方が良いでしょう。最近は受講料が0円とか、学校が指定した施設・事業所に就職が決まったら全額キャッシュバックといううたい文句が増えていますが、これは学校が施設側から紹介手数料を得ることを目的としているため、就職先が制限されてしまう(しばりが生じる)というデメリットがあります。就職先は自分で選んでも良いところに行くことをお勧めします。ちなみに、介護業界の紹介手数料は年収の20~30%とされていますので、学校側は施設・事業所からひとり50~70万円ぐらいのバックマージンをもらっていることになります。受講料を0円にしてでも生徒を集めて、紹介に走りたい学校の意図が分かりますよね。

 

別に人材紹介業が悪いと言っているのではありません。人材紹介が出口となってしまうと、入口や中身の教育がおろそかになってしまうということです。どのような介護・福祉教育を提供するかではなく、どれだけ紹介するかが重要になってしまうのです。悲しいことに、今、全国のほとんどの学校は教育から人材紹介へと重心が変化してしまっています。そうしないと、学校が生き残っていけないからです。それでも、これからの介護・福祉の世界を担う人財を育てる、質の高い教育はどこへ行ってしまうのでしょうか。

 

つまり、受講料は適正なものを選ぶべきということです。15日間の研修を受け、新しい技術や知識を学ぶと考えたとき、さすがに10万円近い金額は高いにしても、0円~3、4万円台はあまりにも安すぎるということです。