コミュニケーションは質×量

私が以前勤めていた子どもの塾におけるスタッフの指針として、「コミュニケーションの質と量があなたの成果を決める」というものがありました。成果という言葉からも分かるように、子どもの教育をビジネスととらえすぎる余り、懐が深くて豊かなビジョンのない会社でしたが、このコミュニケーションに関する指針だけには納得・共感するところがありました。つまり、コミュニケーションとは質×量であり、特に対人援助を仕事とする私たちは、コミュニケーションの質を高めるだけではなく、量を増やすことも大切で、それによって相手にとっての意味や価値が大きく違ってくるということですね。

もう少し深く説明すると、コミュニケーションの質を高めるというのは、相手に何かを伝えたい、それによってこのように行動してもらいたいという具体的な意図を持って話すということです。介護の現場でも、利用者さんに対して伝えたいこと、またこのように行動してもらいという意図があるはずです。ただの空疎な言葉のキャッチボールはウォーミングアップとしては大事ですが、それだけでは相手にとっても自分にとっても何の意味もありません。仕事として対人援助をしているのであれば、相手に何かを伝えられないコミュニケーションは価値がないのです。そこは日常生活の会話と線引きをして話すべきでしょう。

 

コミュニケーションの量を増やすことも大切です。質を高めることと矛盾するかもしれませんが、他愛ない話をすることは、しないよりも良いことです。それは相手に興味があって、見守っていることを伝える方法のひとつであり、放っておくと私たちは何もしない(話しかけない)という楽な道を進んでしまいます。だからこそ、利用者さんとの接点を増やすためにも、コミュニケーションの量も意識することは大事です。

 

つまり、コミュニケーションは質だけでも量だけでもダメで、どちらもあってこそ成果につながるということです。成果というと生々しいので、相手にとって意味のあることが伝わって、行動が変わることで価値が出るということです。結果的に、私たちもハッピーになれるところまでが成果です。コミュニケーションの質と量が私たちの成果を決めるということは、もちろん仕事だけではなく、実は人生においても当てはまるのではないでしょうか。

 

 

湘南ケアカレッジの先生方と生徒さんの関係を見ると、コミュニケーションの質と量が十分であることが分かります。授業後に書いてもらうアンケートやリアクションペーパーの声を読んでも、先生方がきちんとコミュニケーションを取ってくれているから、生徒さんたちに意味や価値が伝わり、それによって感謝・尊敬してもらっていることが伝わってくるのです。この前、電話で卒業生と話していたとき、「現場で働いていると、先生方の声が聞こえてくることがありますよ。叱咤激励されています(笑)」とおっしゃっていました。卒業しても聞こえるほどの十分なコミュニケーションの質と量に溢れているのを知って嬉しく思います。