自己と他者の境界線は消えてゆく

1月短期クラスが修了しました。2023年が明けたと思ったら、もう1つのクラスが終わりを迎えてしまいました。とても仲の良いクラスで、もうこれでお別れになってしまうのは惜しい気持ちで一杯ですが、それぞれの道に進んで頑張ってもらいたいと願います。15日間というわずかな期間とはいえ、年齢も性別も超えて、他者とこれだけの密度と濃度でつながることができるとは、本人たちも思ってはいなかったのではないでしょうか。それこそが介護職員初任者研修の魅力のひとつであり、湘南ケアカレッジの良さでもあります。先生方の素晴らしさを始めとした学校全体の雰囲気がそうさせているのだと思います。

 

1月短期クラスには、足が不自由な生徒さんがいました。卒業生さんの知り合いでしたので、事前に「受講できますか?」と聞かれましたが、ふたつ返事で「大丈夫ですよ」とお答えしました。かつては左腕を切断してしまった生徒さんや聴覚障害のある生徒さん、ストマをつけながら参加してくれた生徒さんなど、たくさんの障害のある生徒さんたちがいました。それぞれにできることを頑張って取り組んでくれて、周りの生徒さんたちのサポートもありながら、無事に卒業しました。ただひとつ障害があって、当校は教室が4階にあるのにビル自体にエレベーターがないのですが、彼は朝イチで来て、ゆっくり階段を登ってきてくれました。介護の学校として、バリアフリーについて教えながら、バリアフリーになっておらず大変申し訳なく思います。

 

1月短期クラスのつながりが深かったのは、彼がいたからとも思えます。彼の人間性も素晴らしかったですし、周りのクラスメイトさんたちも素晴らしかった。自分には簡単にできても、他者にとってはできないことがある。自分にとっては当たり前のことでも、相手にとっては当たり前ではないこともある。私たちは障害のある人と共に過ごすことで、できることとできないことがあり、当たり前が当たり前ではないことを知るのです。そして、次第にそのことが当たり前になり、今度は自分にはできなくて、他者はできることがあることに気づき始めます。目に見えて分かりやすいかどうかの差であって、自分にもできないことは実はたくさんあって、周りの人たちが補ったり支えたりしてくれているということです。そうやって凸と凹を組み合わせながら私たちは他者と生きているのであり、それを体感することで自己と他者の境界線は消えてゆくのです。

 

 

難しく書いてしまいましたが、私たちは助けているようで助けられている、支えているようで支えられているということです。できることとできないことがあり、それを他者と組み合わせながら生きているのです。自分は何でもできると思ったら大間違いであり、たとえ今はできることの方が多かったとしても、老いていくにつれてできないことの方が多くなったりします。そうなったとき初めて他者と生きることを知る人もいるかもしれませんが、1月短期クラスの生徒さんたちはすでに他者と生きることを学んだのではないでしょうか。凸凹を組み合わせているうちに、自分と他者が融合してひとつになっていく感覚を、彼がいてくれたおかげで学ぶことができたのです。