多様性、リテンションマネジメント、多職種連携

看護師の藤田先生が、夜勤明けに教室に立ち寄ってくれました。ある病院から研修を頼まれているけれど、内容がまとまらないので、そのブレインストーミングを手伝ってくれないかとのこと。ブレインストーミングとは、あらゆるアイデアや考えを一旦出し合って、それから整理をすること。誰かに自分の考えていることを話したり、また誰かの意見を聞いてみたりすることは、頭の整理になるのです。

 

 

テーマは、「多様性」と「リテンションマネジメント」、「多職種連携」の3つ。「リテンションマネジメント」は聞き慣れない方が多いと思いますので説明しておくと、離職を防ぎ、人材を組織に定着させるように管理することを意味します。3つを並べてみると、自分とは違う考えや背景を持つ人たちと、それぞれ尊重しながら働いて、人が辞めない組織をつくりましょうという意図の研修でしょうか。

藤田先生が考えれば考えるほど分からなくなっていくとおっしゃるのが、多様性の問題でした。相田みつをの「みんな違って、みんないい。」の世界観を職場でも推し進めていくと、「私は趣味を大事にしているので、土日は休ませてください」などと言うスタッフが出てくるそうです。ある一定の目的や目標に向かって全員が足並みを揃えるからこそ組織は強くなるのに、それぞれの価値観や都合を尊重していては成り立たないという話です。たしかに難しいテーマですね。個人的には、多様性はあくまでも認めたり、受け入れたりするものであって、主張する(押し付ける)ものではないと思います。よって上記の「趣味を大事にしているので~」は多様性でありません。

 

「リテンションマネジメント」は僕も知らない言葉でしたが、介護・医療の現場のみならず、どこの業界の職場でも大きな問題になっていますね。働き手不足の現状において、働く人はここがダメならあそこがあるとなり、転職のハードルは下がり、それによって多少の理不尽やハードワークを我慢する必要がなくなっています。働き手にとっては自由度が増したのは確かですが、その分、歯止めが利かなくなってしまいます。逃げ場がないからこそ頑張ることができ、その中で知識や経験だけではなく、人間性も磨かれていくのですが、そこをスルーできてしまうことで、皮肉なことにずっと置き換え可能な流動的な人材でしかなくなってしまうのです。

 

実は忙しかったり自分のキャパを超えているときには人は辞めず、暇で能力を持て余しているときほど辞めるので、その人のキャパを超えるか超えないかぐらいの量と質の仕事を任せ、見守り、成長させ続けてあげることが大事だと個人的には思います。そうすることで、その人は唯一無二の人材になり、長く働いてくれる可能性は高まります。

 

最後の多職種連携は、簡単に言うと、まあ仲良くやりましょうよということです。たとえば、看護と介護の連携を見たときに、変わるべきは看護側の見方だと思います。藤田先生や村井先生などのように、介護スタッフと対等にフラットに仕事ができる看護師は少なく、多かれ少なかれ、どこかで看護師が上で介護士が下と思ってしまっています。たしかに国家資格として取得するのにお金と時間がかかるのは前者ですし、できることの専門性が高いのも前者ではあります。ただそれは一緒に仕事をする際の上下関係を規定するものではありません。どちらが上(下)で指示を出す(あおぐ)ではなく、互いのできること(強み)を生かして協業することです。そこの考えが看護側にあるかないかだけの話だと思います。

 

 

このように、普段、自分では考えないことを誰かと話し合ったりすることで、自分の考えを整理したり、また他者の意見を知ることができたりする機会は大切です。もしかすると、研修を受けにくる人たちよりも、研修をする側の人の方が学びは大きいのかもしれませんね。研修においても、そのようにブレインストーミングをして、互いの考えや意見が違うことに気づくところからスタートしても良いはずです。